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「難病や医療的ケアが必要な子どもたちの夢をかなえたい」-NPO法人「しゃらく」代表の小倉譲さんに聞く

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■「まさゆめProject」とは


・「まさゆめProject」とは

NPO法人「しゃらく」が運営する、難病や医療的ケアが必要な子どもたちが心で強く願う夢や希望を、市民や企業からの応援を頂きながら形にしていくチャレンジの舞台。難病や医療的ケアが必要な子どもたちを「チャレンジャー」と呼び、チャレンジャーは3人1組でチームとなる。チャレンジャーの夢や希望実現のために寄付を通じて応援いただける方を「ドリームサポーター」と呼び、期間を決めて寄付を募る。

・「桜の夢の森」とは

一つの夢が実現すると一本の桜の木を植樹するというもの。実現した夢や希望の数だけ桜の木を植えて、それが満開になるとき、チャレンジャーやドリームサポーターがこの桜の木の下に集まることを夢見ている。現在、交通の便のいい場所に桜の木の植樹場所を探している。

・設立の経緯

私自身が青年期に何度か大きな手術を受けたが、その時に病院で出会い、後に他界した青年は退院したことがなく、生まれた時から無菌室という閉ざされた世界に生きていた。私は彼にとって同年代の最初で最後の友人。ある時「病院に長く居るからたくさん本を読んでいる。編集の仕事をして母と父に楽をさせたい」と夢を話してくれた。それを聞いた時、すごく悔しかった。その時に社会とは何だろう、「難病だから」「障害者だから」と理由をつけて世の中の見えない差別になっているのでは、と葛藤があった。私たちは努力さえすればスタートラインに立てるが、スタートラインにすら立てない人がいるのは社会的不平等だと感じた。その時から公平な社会を、市民が市民を助ける社会を作ろうと思い、準備を重ね、今年4月1日にスタートした。

・設立後すぐに募金は集まった?

集金状況は厳しく、なかなか前に進まない状態が続いている。8月31日までに140万円の寄付額を目指しているが、クラウドファウンディングから入ってきているのは40万円弱くらい(5月24日時点)。

・チャレンジャーはどうやって決める?

2歳以上18歳未満で、近畿地方に住み、難病か医療的ケアがなければ夢実現が難しい方を募集している。現在のチャレンジャーは自分が探してきた方々。これからも多くのチャレンジャーの夢をかなえたい。


■「まさゆめProject」の現状
・募金活動や講演活動も

4月に4回、関西学院大学で「ソーシャルイノベーション」について講演したことで、現在40人以上の学生が関わってくれている。一般社会と福祉社会の間の大きな壁を無くしたいが、考えの凝り固まった大人たちに変えてもらうのは厳しい部分があると感じている。これからもたくさんの大学や学生に関わってほしい。同学生らは協働のお願いをしてからわずか1カ月で難病の子どもたちに会いに行きTシャツや横断幕も作った。5月18日に学生らが行った街頭募金では、募金の難しさを痛感しながらも約12万円が集まり、その結果には「すごい」の一言だった。

・「もったいないプロジェクト」とは

まだプロジェクトの広がりが浅いからかなかなか募金が集まらず、加えてわれわれの人件費の問題があるので、現在プロジェクトは赤字。このまま赤字が続くと「まさゆめプロジェクト」存続の問題になるので、「もったいないプロジェクト」と名付け1,000万円のファンドを作る計画を立てている。神戸市民を中心に封筒を配り、書き損じはがきや使用済み切手、テレホンカード、余った商品券などを入れて返信していただき、それを資金源に充てさせていただこうというもの。今年末に神戸市内を対象に50万部の配布を予定。封筒の印刷費などもあるので、現在はスポンサーを募集している。


■8月31日まで募金を受け付けるチャレンジャーについて
・夢生(ゆうせい)くん

夢生くん(2)は「ディズニーランドに行ってディズニー音楽を聞きたい」という夢を持っている。566グラムで生まれてきた夢生くんは当初「目は見えない、耳も聞こえない」と診断されていたが、NICUでディズニー音楽を聞いたときに笑ったことから耳が聞こえることが分かった。何が何でも生の演奏を聞かせてあげたい。

・南ちゃん

今回のチャレンジャーの中では一番重度の障害を持っている南ちゃん(13)は「いろいろな乗り物に乗りたい。できれば嵐に会いたい」という夢を持っている。難病であるウェルドニッヒ・ホフマン病と診断され、これまで乗り物に乗ったことがない南ちゃん。いろいろな体験をさせてあげたい。人工呼吸器を装着しているので、バッテリーが持つ時間だけ移動が可能。お姉ちゃんとともに「嵐」に会いたい夢をかなえてあげたい。

・直生くん

直生くん(13)は宇宙が好きで「種子島宇宙センターに行きたい」という夢を持っている。1歳にならないうちに小児がんと診断された直生くん。がん摘出手術を受けたが大動脈に絡みついていたために全てを摘出できず、がんと共存してきた。今は落ち着いているが、いつどうなるか分からない状態。話をしていると、宇宙という無限の可能性と自分の病気が治る可能性を重ねているように感じた。直生くんに関しては既に出発の日程が決まっているので、準備に力を入れたい。

・現在の状況

5月24日時点での寄付金は65万3,192円。3人の夢の実現にはまだ70万以上が必要。まずはたくさんの方にこのプロジェクトを知っていただき、ご協力いただければ。

・期限までに募金が集まらなかった場合は?

募金金額が目標を達成できなかった場合は、チャレンジはなくなる。一人でも多くの方に「まさゆめProject」を知っていただき、ぜひ寄付をお願いしたい。


■「まさゆめProject」の今後
・プロジェクトの目指す先は

現在は近畿地方のみチャレンジャーを募集している状態なので、日本全国を網羅できるように、サイトの仕組みも含めたノウハウを提供していきたい。そのためにもこの取り組みの成功モデルを作り、全国へ広げていきたい。

・小倉さんの今後は

私の両親が「週末里親」に取り組んでいた。今まで2人を成人するまでお世話をさせて頂き、血のつながりのない弟が2人いるようなもの。週末には、施設の子を迎えに行くのによく施設に足を運んだ。よく足を運んだ2つの施設は、子どもが健全に育つ環境では決してなかったように感じる。子どもが親に求めるのは愛情。怒られもするけど最終的には守ってくれる安心感や帰る場所は必要。そういう場所を提供できる仕組みを作りたい。

大人の愛情を受けずに育った方は、子を持っても接し方がわからずに同じことをしてしまう悪循環があると聞くが、そんな負のスパイラルを断ち切りたい。人さまの子を育てるのは難しいとは思うが、子育てが終わりそうな世代の方を巻き込んで将来的にやっていきたい。そのためにも「まさゆめProject」でお金を集めるモデルを確立したい。今まで言ってきたことは全て形にしてきたので、これも達成したい。


■取材を終えて
学生らとともに行った募金活動では、福祉社会に触れた学生に「人ごとではなく自分ごとになり人のために汗をかくことを知り、モノがあふれる社会で忘れられた大切な何かが詰まった1カ月。主体的に関わってくれた学生の心の変化は金額では測れない価値があるように思う」と話す小倉さん。

8月31日までの同プロジェクトの達成率は47%(5月24日時点)。小倉さんは「プロジェクトに共感いただけた方には、ぜひ募金をお願いしたい」と呼び掛ける。「もったいないプロジェクト」や「里親制度の確立」など今後の展望についても聞かせてくれた小倉さんと、次回のチャレンジャーも決定したという「まさゆめプロジェクト」の今後に期待したい。


まさゆめProject

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