特集

「バロックパールで個性のあるジュエリーを」-ジュエリーデザイナー・伏見愛佳さんに聞く

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■神戸と真珠


-神戸で真珠を扱うことについて特別な思いはありますか?

イタリアで修行中、まだ真珠に詳しくなかった時に、良いパールを探すと「made in Japan」が出てくることに驚いた。イタリアでも日本の真珠の評価は高い。五大宝石(ダイヤモンド・ルビー・サファイア・エメラルド・真珠)中、唯一日本で採れる真珠。「日本には真珠がある」ことを誇りに思っている。

-神戸に出店された経緯を教えてください。

横浜出身で、神戸に旅行した際に「ちゃんと女性が女性らしい街」だと感じた。大阪に出店することも考えたが「神戸で店を開きたい」という思いの方が強かった。

-どんなお客さまが多いですか?

20代後半からの女性客で自分用にお求めになる方が多い。はやりものよりも、高価でも自分に似合ういいものを持ちたいと思う方が増える世代なのだと感じる。いいものを買っておいた方がいいということに気付いた方に来店いただくことが増えている。

-神戸のお客さまの真珠に対するこだわりを感じる時はありますか。

お客さまと話していて一番耳にする言葉が「もう普通の真珠のジュエリーは持っている。普通のはいらない」という言葉。バロックパール(形や色が不規則なパール)を使用した、個性のある普段使いのできるものが欲しいという方は多い。


■真珠のジュエリーについて

-「クアラントットらしい独自のパールづかい」とは具体的にどんなもの?

一言で言うと「個性」。お利口さんの新円パールよりもはみ出したパールが好き。一つずつ違うのが自分と真珠との新たな出合いという感覚があっていい。自然にできる美しさを生かしたパールのジュエリー。お客さまも形や色を比べて色や形が気に入った物を探している時間を楽しんでくださっている。

-珍しい真珠も使っているのですね。

貝の中でくっついた双子の真珠など扱っているが、珍しい分探すのがとても大変(笑)。量産品ではないからできること。個性のあるジュエリーを扱うのが当店の役割なのでは、と感じることもある。

-真珠は人気?

お好きな方はパールのジュエリーばかりお求めになる方も。当店のジュエリーにはどこかにパールが入っているものがとても多い。例えばネックレスのアジャスターのエンドの部分にはアコヤのケシパールを使用している。それは髪の毛をアップしたとき、360度どこから見ても美しいように考えたもの。

-真珠の魅力とは?

ジュエリーに使うものの中で唯一の生き物だというところ。人が見てほっとできる何かがある。

-真珠の扱い方で注意することはありますか。

あまり知られていないが、真珠は水に弱いので入浴の際は外さないとつやがなくなってしまう。汗をかく季節は素肌につけないようにし、付けた後は水分を拭き取るようにすることが大事。


■クアラントットについて

-ジュエリーデザイナーになるきっかけは?

もともとジュエリーには関係のないOLだったが、絵を描くのが好きで絵を描く仕事がしたいと思っていた。つらい時期に、街を歩いてジュエリーを見たり買ったりするのが好きになった。そのうち「かわいいけれど、もう少しこうだったらいいのに」と思うようになりジュエリー製作を習うようになった。彫金の学校に行くとすぐにのめり込み、そのまま5年間日本で修業。その後、イタリアで1年修行し帰国。クアラントットを立ち上げた。

-デザインだけでなくジュエリーの制作もされるのですね。

ジュエリーを作る仕事は力仕事なので男性ばかり。「女性が付けるものなのに、どうして女性が作らないの?」と最初に知った時はショックだった。イタリア修業中、デザインはデザイン、彫金は彫金、石留め(いしどめ)は石留めと学校が分かれていたので3校全てに通った(笑)。重さや付け心地を確かめながら作ることが大事だと思っているので、デザインだけではなく自分で全部できるようになりたかった。

-デザインするジュエリーに込める思いはありますか?

当店では、お客さまにジュエリーを購入いただくことを「嫁に行く」と言い、クリーニングや修理でお預かりすることを「お里帰り」という。ジュエリーは我が子のような存在。嫁に行っても我が子は我が子。大切にしていただいているのが分かるので、お客さまに着けていただいて来店いただくのがうれしい。

-エンゲージリングの需要は?

2階にブライダル専用のサロンがあり、セミオーダーで受け付けている。デザインや素材、ダイヤモンドを選んでいただき一から作る。価格は20万円から。大事なものを選ぶので2時間近く見ている方もいる。週末は予約で埋まってしまうことも。


■今後について

-新たに考えられていることはありますか?

店に対しては、まだスタートにも立っていない、神戸だけにいるうちは駄目だと思っている。神戸でたくさんの方と知り合えて神戸には感謝することばかり。これからはもっといろいろな場所で「神戸発ブランド」をアピールしたい。

-これからのクアラントットは?

大丸神戸店や大阪高島屋にも出店し、一人では無理だったと思うことも今はかなう。オープン5年目にしてやっと環境が整ったと感じている。メンバーそれぞれがすごくいいチームなので、まだまだできる。

-クアラントットのジュエリーとは?

「毎日がちょっと幸せになるジュエリー」を大事にしている。女性は普通の日でもお気に入りのジュエリーを着けたりおしゃれをすると外に出掛けたくなったり明るくなれる。使い捨てではなく、長く引き継いでいけるよう素材にもこだわっている。自分で少しずつ集められ、普段使いができるジュエリーを提案していきたい。



■インタビューを終えて

海外出張を3日後に控えた6月某日。多忙の中、終始笑顔で取材に応じてくれた伏見さんは「ジュエリー製作は力仕事、ジュエリー業界は男性ばかり」と話す。男性ばかりの中で修業し、デザインだけではなく製作にも携わり、力仕事もこなす伏見さん。話していても強さを感じる。だがそれは、ただ力のあるたけだけしい男性のような強さではなく、強い信念を持ち一本筋が通った強く優しい女性という印象だ。

クラシックホテルが好きだという伏見さんのデザインで店内の内装にもこだわった。ショーケース内のクッションなどさまざまな小物は伏見さんの手作り。店内のソファやシャンデリアもイタリアののみの市などで購入したアンティーク家具を配置した。老舗と新しい店舗が入り交じるトアロード近辺でも、隠れることなく独自の存在感を発揮している。

仕入れ先を当たって珍しいパールを探していると神戸の業者にあることが多く、神戸が古くから真珠の街であることを実感することが多いという伏見さん。「東京の友人も神戸はおしゃれだと言う。こんなにいい土壌なのだから、もっとほかの地域でもアピールしていきたい」と意欲を見せる。今後のさらなる活躍に注目したい。

quarant'otto Jewelry works(クアラントット ジュエリーワークス)

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