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神戸で抽象画家・小山泰三さんの個展-壁をテーマに50年以上描き続ける

人生模様を繊細なディテールで刻んでいるように見える「壁」をモチーフにした作品

人生模様を繊細なディテールで刻んでいるように見える「壁」をモチーフにした作品

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 神戸在住の芸術家・小山泰三さん個展「ON THE WALL」が現在、海外移住と文化の交流センター(神戸市中央区山本通3)で行われている。主催は「C.A.P. 芸術と計画会議」(同、 TEL 078-222-1003)。

地中海の街々の「壁」の影響を受けて誕生した作品が多く並ぶ会場

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 小山さんは1927(昭和2)年神戸生まれ。「太平洋戦争が始まった年、旧制中学校の美術教室でデッサンや油絵を夢中になって描いていたが、戦災で兄も家も失い一家の生活を支えていかなければならず、絵が描けない日々が続いた」と話す。「ある日、港の倉庫の壁が陰鬱(いんうつ)な人生模様を繊細なディテールで刻んでいるように見えた」という小山さんは、あらゆる壁をカメラに収め始める。1950(昭和25)年、「壁」の造形に触発され再び絵画を始めた頃、フランス帰りの画家・小野藤一郎氏に出会い洋画を習う。そして、抽象表現主義の洋画を描くに至った。

 1960(昭和35)年、「ベネシアネーアデザインコンクール(英文毎日主宰)」で受賞。その後、小山さんは兵庫県立近代美術館副館長や横浜美術館美術情報センター長に就任するなど、芸術の世界で活躍、現在は南フランスやイタリアへの取材旅行を続けつつ生涯のテーマである「壁」に取り組む傍ら、芸術文化雑誌「紫明」の編集長を務めている。

 今回のテーマでもあり、1983(昭和58)年の個展以来続いている「ON THE WALL」について、小山さんは「壁の上にある抽象的な模様であったり、キャンバスを壁に見立てて描くことであったり、訳すといろんな意味にとれる。ここにある絵画は、地中海の街々の『壁』の影響を受けて誕生したものが多い」と話す。

 会場には、壁一面の大きな作品や医療用ガーゼを使用してコラージュした作品、小山さんの頭の中を表した自画像などが並ぶ。「形を表現しない抽象絵画を描いていたが、最近になって形を取り入れた作品も描き始めた。これからも作品のスタイルは変化させていく」と思いを語る。

 会場では、中村由紀子さんの個展「care about you」も同時に開かれており、オープニングパーティーではアフリカの楽器「ムビラ」の演奏なども行われた。

 開館時間は10時~19時(最終日は17時まで)。月曜休館。今月24日まで。

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