市庁舎からの景色 ©一般財団法人神戸観光局
神戸市では、地域の特性にふさわしい土地利用の増進や環境の保全などを目的として都市計画区域に「都心機能誘導地区」「文教地区」「大規模集客施設制限地区」の特別用途地区を設け、用途地域の制限に加え、さらに建てられる建築物の用途を制限している。
都市機能とバランスのとれた都心居住を誘導するため2019(平成31)年3月5日、三宮駅を中心とする都心の「商業地域」に「都心機能誘導地区」を指定。2019年7月4日、住環境の保全と育成を図ることを目的に定めた「神戸市民の住環境等をまもりそだてる条例」により、同区域の制限に関して必要な規定を定めた。
都心機能誘導地区内、6つの「えき」(JR、阪急、阪神、地下鉄西神・山手線、地下鉄海岸線、ポートライナー)と「まち」をつなぐ「えき~まち空間」の範囲をベースにした「都心機能高度集積地区」(22.6ヘクタール)では住宅などの建設を制限。その外側に当たる新神戸駅~元町駅~神戸駅周辺の「都心機能活性化地区」(292ヘクタール)では住宅部分の容積率が400%を超える建物の建築を制限する。(2020年7月1日施行)
■「神戸の魅力を伝える」神戸フィルムオフィス代表 松下麻理さんに聞く
神戸フィルムオフィス(神戸市中央区御幸通6)は神戸市のフィルムコミッションとして2000(平成12)年9月に設立。国内外から映画やテレビドラマ、テレビ番組、CM、ミュージックビデオ、写真などの撮影を神戸に誘致し、行政や市民などの理解を得ながら撮影に必要な支援を提供している。
同社代表の松下麻理さんは、2010(平成22)年7月に神戸市が初めて公募した広報専門官に就任し、2015(平成27)年3月まで広報官として神戸市の広報を担った。現在は、海と山に挟まれた東西に細長い市街地を持つ神戸の魅力を映像作品の誘致やロケ支援を通じて発信している松下さんに話を聞いた。
-神戸の風景
独自の地形を持つ神戸には美しい海と山をはじめ、高層ビルが立ち並ぶ都会的な市街地、ヨーロッパの香りただよう街角、昭和の風情が残る町並み、温泉街や田園地帯など、さまざまな風景がコンパクトに詰まっている。神戸港開港以来、さまざまな国の方が訪れることで多種多様な神戸の文化が生まれたんだと思う。
-自然も楽しめる街・神戸
新神戸駅を出てすぐにハイキングコース現れる。初心者でも気軽に林間ハイキングが楽しめるコースは徒歩わずか数分で日本の滝百選にも選ばれた「布引の滝」に到着。朝からハイキングを楽しんで市街地まで下りてウインドーショッピング、夕方には神戸港で海を眺める。そんな楽しみ方ができるのもコンパクトな神戸ならでは。
布引の滝 ©一般財団法人神戸観光局
-生産地と街が近接する神戸
消費者が生産者と出会い、神戸で生産されたものを買って食べる場が神戸にはある。神戸の中心に位置し芝生広場がある都市公園「東遊園地」では、土曜の朝に地産地消のライフスタイル化を目指すファーマーズマーケットが開かれ、生産者との会話を楽しみながら買い物ができる。
-神戸の新しいスポット
阪神・淡路大震災20年の継承・発信事業の中で震災を経験していない人にも受け継いでもらいたいという願いを込め、て「神戸は人の中にある」を意味する「BE KOBE」というスローガンを作った。これはシビックプライド(市民の誇り)でもあり、「人のために力を尽くす」というメッセージも込められている。神戸開港150年記念事業の一環として2017(平成29)年4月にリニューアルしたメリケンパークの水際に設けた「BE KOBE」モニュメントがフォトスポットとして人気で、今年7月8日にはポーアイしおさい公園にも新たな「BE KOBE」モニュメントが完成した。
BE KOBE ©一般財団法人神戸観光局
-神戸の芸術文化
神戸では「神戸ビエンナーレ」「港都KOBE芸術祭」「六甲ミーツ・アート 芸術散歩」「下町芸術祭」など、街のあちこちで個性的なアートイベントが行われている。今年は9月14日~11月10日まで「アート・プロジェクトKOBE 2019:TRANS-」が開催されている。
神戸ビエンナーレ 2015(平成27)年
-神戸ルミナリエ
来年1月17日、阪神・淡路大震災から25年を迎える。犠牲者への鎮魂の意を込めるとともに、「神戸のまちの復興と再生を願う行事」として震災の起こった年の12月に始まった「神戸ルミナリエ」。25回目を迎える今年の開催が12月6日~15日に決まった。震災の記憶を後世に語り継ぐとともに神戸の希望を象徴する行事の節目としても注目している。
神戸ルミナリエ 2015(平成27)年
-神戸らしい都市景観
鉢巻展望台からの景色 ©一般財団法人神戸観光局
神戸といえば山から見下ろす海、海から見上げる六甲山系。今回の規制が神戸らしい眺望を残していくことにつながればうれしい。
山の景色 ©一般財団法人神戸観光局
-最後に
近年、都市機能の充実や交通利便性の高さなどから、高容積率を活用した大規模マンションが多く建設され、都心部に人口が集中しがち。都市の活力とにぎわいを創出するためには、働く場とともに一定の定住人口が必要だが、過度に居住機能が増加すると、商業・業務などの都市機能の立地阻害や小学校など子育て関連施設の不足、災害時の避難場所・備蓄のさらなる確保などの課題も残る。多様な都市機能と居住機能とのバランスの取れた魅力と活気あふれる都心づくりを目指す取り組みに期待したい。