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神戸「海文堂書店」が閉店へ、創業100年目前で「活気ある本屋のまま」

創業100年目前で閉店を発表した海文堂書店

創業100年目前で閉店を発表した海文堂書店

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 創業100年を目前に9月末で閉店することが分かった神戸元町商店街の老舗書店「海文堂書店」(神戸市中央区元町通3)が8月9日、同店ホームページで顧客らへ向けメッセージを配信した。

2005年に「書皮大賞」を受賞したブックカバー

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 1914(大正3)年、海や船舶など海事関連書の専門店としてオープンした同店。海事書の品ぞろえは日本一を誇る。1970年代に書籍の取り扱い分野を拡大し、現在は1階で一般書や雑誌、児童書などに加え、震災書を含む神戸に関連する書籍を多く扱い、2階は海事書や芸術書、学習参考書などをそろえる総合書店となった。

 1995年に発生した阪神・淡路大震災では、発生から約1週間で営業を再開。2003年7月から続く月間通信「海会(かいえ)」や雑誌「ほんまに」を発行するなど神戸の活字文化を支えてきた。2011年の東日本大震災発生後には「震災のつらさを知っている自分たちだからこそ、少しでも東北の方の痛みを和らげられたら」(岡田節夫社長)と、東北の版元による書籍を重点的に販売するなど、神戸の書店ならではの支援を行った。

 「海文堂といえば」と読書家らに愛されたブックカバーは、2005年に優れたデザインのカバーをたたえる「書皮大賞」を受賞。岡田社長が「友人に10万円で頼んだ」(同)という帆船柄のデザインで、1981(昭和56)年からずっと同店の顔になっている。一度新調したが、利用客から「元に戻してほしい」という要望が相次ぎ、1週間で復活させたという逸話も。2010年12月には店内に古書店4店舗を誘致し、「元町・古書波止場」をオープン。同店の新しい取り組みに古書好きの年配客が増加していた。

 しかし現在はピーク時の6割程度にまで売り上げが減少。2000年以降はインターネット書店や周辺の大型書店などの出店も相次ぎ経営不振が深刻化していた。今月5日の開店前に岡田社長が店員らに事情を説明、閉店の意向を伝えたという。

 岡田社長は「息のあるうちに撤退しようと決めた。皆さまには『昔ここに本屋があったな』とたまに思い出していただけたらうれしい。その時のイメージが活気のある本屋のままであればと願っている」と話す。

 同店の顧客らへは9日午前中にホームページで「海文堂書店は、2013年9月30日をもちまして閉店させていただきます。長らくご愛顧いただきまして、誠にありがとうございました」(原文ママ、一部抜粋)とメッセージを発表した。閉店後はドラッグストアが入居、12月初旬の営業開始を予定しているという。

 9月末の閉店までは平常営業を続ける。同21日~27日には昨年10月に亡くなった切り絵作家・成田一徹さんの個展を開催。書籍販売業は終了するが、東京での出版事業などは継続する。

 営業時間は10時30分~19時。

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