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冨田勲さんが専門学校で講演-ポートピア以来30年ぶりの来神

モーグ・シンセサイザーを背景に語る冨田勲さん、提供=神戸電子専門学校

モーグ・シンセサイザーを背景に語る冨田勲さん、提供=神戸電子専門学校

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 神戸電子専門学校(神戸市中央区北野町1)で6月19日、作曲家・冨田勲さんによる公開セミナー「サラウンド音楽の可能性と実際」が開催された。

サウンドクリエイト学科の同校生約25人との交流会、提供=神戸電子専門学校

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 冨田さんは1932(昭和7)年東京生まれ。1950年代、慶応義塾大学文学部在学中に作曲家として活動を始め、放送、舞台、映画、コマーシャルなど多くの作品で音楽を担当。特に大河ドラマやNHK番組、手塚治虫アニメの主題曲、BGMには名曲が多く、繰り返し単独やオムニバスでレコードやCDが発売されている。初期のころは、作曲家として活動する一方、従来のオーケストラという演奏形態に飽き足らず、電子機器と古典的な楽器を融合させるなど、さまざまな音楽の可能性を追求。その後1969(昭和44)年にモーグ・シンセサイザーと出会ったことが転機となり、以降は古典的な名曲をシンセサイザーによって現代的な解釈を加えて発表するという活動が中心となる。

 1981(昭和56)年に神戸で開催された「神戸ポートアイランド博覧会(ポートピア’81)」では、パビリオン「住友館」「サントリー館」のテーマ音楽を担当した冨田さん。「神戸に来たのはポートピア以来、30年ぶり」という。

 同校のマルチメディアホールで行われた講演には、同校生約50人、一般客約70人が来場。舞台には、国内では数台しかないという同校所有の演奏用シンセサイザー「Moog System 55(モーグ・システム55)」が設置され、今月1日にリリースされた「惑星(プラネッツ)Ultimate Edition」「源氏物語幻想交響絵巻・完全版」(以上Hybrid SACD、日本コロムビア)をはじめ、さまざまな作品の試聴を行いながら、サラウンドでの音楽制作について語った。

 冨田さんは「音楽はメロディーではなくて音の塊。子どものころ、音の響きにとても興味があった。父の仕事の関係で北京に移り住んだ時、湾曲した城壁がくねくねと続く『回音壁』に出合った。幼いころのこの体験が音響というものに興味を持つきっかけ」と話す。

 1977(昭和52)年にビルボードで1位にランキングされた「惑星」を新たにリメークしたという「惑星(プラネッツ)Ultimate Edition」には、新曲「イトカワとはやぶさ」を追加収録。同曲は、日本の宇宙航空技術の父と呼ばれる糸川英夫博士へのレクイエムとして作曲された。「貝谷八百子さんの主宰する『貝谷バレエ団』にバレエ音楽として『惑星』を持ち込んだときに同バレエ団に糸川博士が所属している事を知った。60歳を過ぎてからバレエを始めたと聞き驚いた」と出会いのきっかけを明かす。「この新曲が入ることで、結果的にアルバムの流れが糸川博士の生きざまを表しているように仕上がった。純粋な気持ちを持った少年のような人で、『生きていたのが夢、死んだのが現実』と感じる」とも。

 講演後は、サウンドクリエイト学科の同校生約25人との交流会を開催。冨田さんは第一声に「君たちは、この学校を卒業したら何をするのか?」と質問。一人ひとりに、辛口ながらも心のこもったアドバイスを行った。同校生が冨田さんの曲をサラウンドミックスした作品の試聴も行われ、「データを持って帰り、時間をかけて聴いて評価したい」という冨田さんの言葉に同校生らは感激した様子だった。冨田さんは、交流会終了後もサインや写真撮影に気軽に応じ、中には愛用のノートパソコンにサインをもらう学生もいた。

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