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「ウエディングを通じて神戸の街を活性化させたい」-谷口享子さん(神戸ウエディング会議事務局長)に聞く

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■神戸とウエディング

-ウエディングで街を活性化させようと思ったきっかけは?

もともとブライダルの司会の仕事をしていて、「一組のカップルが結婚式を挙げ結婚披露宴をすると大きな経済効果がある」と思っていた。実際ウエディング産業に関わる業界は、会場やドレスだけではなく美容業界や飲食業界、印刷業界など多岐にわたる。2003年ごろ神戸にゲストハウスを中心に婚礼施設がたくさんできるといううわさがあり、それなら決まった数のカップルを取り合うのではなく、みんなで協力して神戸に新規顧客を誘致し盛り上げたいと思った。

-ウエディングセレモニーを通じて見えた神戸の魅力は?

他府県の方から「おしゃれな街」と言われることが多い神戸。海があり、山があり、その間に街がある都市は世界的に見てもなかなかない。海の近くのチャペルで結婚式を挙げて、二次会は山からの夜景を見ながら開催することも神戸なら簡単。ハワイやグアム、沖縄で挙式をするのと同じように「神戸はすてきな街だから神戸でウエディングをしたい」と、たくさんの方に感じていただける魅力がある。


■神戸市内各地でウエディングセレモニーを開催

-印象深かったイベントは?

2007年10月に行った「Canal Garden Wedding」。子どもたちで構成するダンスチームがダンスを披露し、新郎新婦がパレードも行った。「神戸ウエディング会議」のみんなが協力し合い、時間もお金もそれぞれの力もたくさんかけてやり遂げたイベント。ギャラリーも多く、その中から「毎年やるならぜひうちの娘もこんな式を挙げさせたい」という相談もあった。

-イベントをする際大切にしていることは?

参加するメンバーの「神戸をウエディングで盛り上げたい」という気持ちがぶれないようにすること。「神戸ウエディング会議」に専任のメンバーはいない。時間のない中それぞれがやれることを一生懸命やって、ここまで続いている。メンバーはみんな「神戸が好き、神戸の街を愛している」という強い気持ちを持った人ばかり。

-イベント参加者の反応は?

お客さまやイベントにふらっと立ち寄った方にも「楽しかった、ありがとう」という声を掛けていただくことが多い。ウエディング会議のメンバーは、みんなで協力していいイベントができた達成感と、神戸の街に貢献できた喜びを感じている。


■他とのコラボレーション、新しい試み

-2010年から活動の幅が広がっていますね。

2006~2009年まではウエディングセレモニーを一年に一度開いただけだった。それではあまりPRになっていないのではないかと感じ、2010年からはウエディングの街神戸をPRし神戸の魅力やウエディングの素晴らしさを全国に発信する人材として、ウエディングクイーンの発掘を開始。神戸で行われた「スイング・ジャズ・クルーズ」や、淡路サービスエリア「恋人の聖地」オープニングセレモニーにも参加させていただいた。現在は2代目ウエディングクイーンが活躍している。

-市内の大学生と協力してイベントを開くこともあるようですが、きっかけは?

神戸ウエディング会議のメンバーに関係者がいたことや、大学側から声を掛けていただいたことから2008年ごろから協力している。企画を学生たちが考え、私たちが形にする。学生たちの企画はさまざまで、神戸山手短期大学の学生は披露宴会場を神戸の海・街・山に見立てた「神戸らしい結婚式」を提案してきたし、神戸夙川学院大学の学生は真珠の町でもある神戸とブライダルに着目し結婚30年目の真珠婚に真珠を交換し合う「PEARL WEDDING」を提案。私たちは会場設備から司会進行まで全面的に協力し、学生とともにイベントを成功させた。

-大学生に協力することで得られたものは?

今現在の神戸を、ウエディングを通じて活性化させることも大事だが、ブライダル業界に興味のある学生を育てるのも大切な仕事。一緒にイベントを開催した学生たちが将来ブライダル業界で働いたり、青春を過ごした街である神戸に関連する仕事をしてくれたりすればうれしい。地方から来ている学生にも「ウエディングの街神戸」を印象づけたい。

-プロポーズを応援するイベントも行っていますね。

毎月第1日曜を「神戸プロポーズの日」として19時59分から1分間、神戸メリケンパークオリエンタルホテルや明石海峡大橋の照明を消していただいている。神戸の名所の一つであるポートタワーを砂時計に見立て、20時になるとイルミネーションがシャンパンタワーのように変化、その前でプロポーズをしてもらうという企画。3カ月に1度はポートタワー前でイベントも行う。神戸でプロポーズをしていただいて、プロポーズの思い出の地である神戸でウエディングをしていただいて、最終的には神戸に住んでほしい。街の活力を増やすためにも神戸に住む人を増やしたい。


■直近と今後の活動について

-5月には和婚のセレモニーも開いたのですね。

5月13日に能福寺(兵庫区北逆瀬川町1)で天台兵庫仏教青年会の協力の下、13人の僧侶が読経する中、十二単(ひとえ)や衣冠束帯をまとった新郎新婦の模擬結婚式を行った。能福寺の境内が平安時代の雰囲気に包まれた。イベントが始まるまではかんかん照りで集まってくれた方も帰ってしまうのではと心配したが、始まるころにはうす曇りで過ごしやすい気温になり、終わるころにはまたいい天気になり助かった(笑)。最近では伝統的な和婚が見直されていることもあり、模擬結婚式の様子を動画配信し「神戸ウエディング」の話題づくりにしたい。9月中旬と11月中旬にも開催を予定しており、7月下旬からは模擬結婚式を体験するカップルの募集を始める。

-今後新たに考えていることはありますか?

ハーバーランド一帯を核とした神戸の街のブライダルイメージ創出の取り組みの一つとして、7月1日から神戸ハーバーランドモザイク2階映画館前で「Love letter from Kobe~ふたりの神戸記念日にラブを送ろう!~」を実施する。1回目の開催は320組を超えるカップルからの応募があり、今回が2回目。カップルそれぞれの思いを込めたラブレターを専用はがきに書いていただき、お互い相手宛てに投函(とうかん)してもらう。相手からの愛のメッセージとともに抽選でプレゼントが当たる。プレゼントは神戸市内のホテル宿泊券やコンチェルト乗船券などを予定している。

そのほかにも9月から実施予定の「ウエディングケーキ選手権」や、神戸市交通局とのコラボレーション企画の「きっと、あなたの思いが伝わる!『駅間恋文』つり革オーナー制度」も7月から募集を始める。この制度は、一般から募集するメッセージを市営地下鉄車両のつり革ホルダーに掲示し、掲示期間中に恋が成就し結婚にまで発展するという都市伝説化を目指すもの。

-神戸ウエディング会議の今後は?

大学生からの協力要請に加え、ウエディングクイーンの露出も増え、神戸市交通局からコラボレーションの依頼を頂き、「神戸ウエディング会議」は着実に認知され始めている。ウエディングは多くの人が一度に集まり神戸を知り楽しみ滞在し、また神戸に来たくなるきっかけづくり。神戸の活性化と観光促進に多くのメリットをもたらす活動を続けていきたい。


■インタビューを終えて

阪神・淡路大震災から神戸は街の発展よりも復興が中心となり、「ハードばかりに目を奪われてソフトに力を入れなかった分、街はどんどん再生したが女性誌から『神戸特集』という文字は消えた」(谷口さん)という印象も強く残る。だが、震災のあった1995年末には142万人(1994年末は152万人)まで落ち込んだ人口も今年5月の神戸市の発表では154万人まで増加している。

「7年目に入るが本当にウエディングの街神戸をアピールできているか不安」と話す谷口さんだが、2008年にゼクシィが調査した結果によると兵庫県で婚姻届を届け出たカップルは1万1773組。披露宴実施率を66.6%と仮定すると披露宴実施数は7841組。それが国外県外への流出、国外県外からの流入数合計後の県内披露宴実施数は1万6018組にもなる。8000組以上のカップルが兵庫県以外からの流入ということになる。これには「神戸ウエディング会議」の力が大きく関わっていると推察できる。

常に神戸の発展と未来を見据え続けている谷口さん。立ち上げには苦労したと話す「神戸ウエディング会議」だが、以前の苦労話も笑ったり怒ったり涙しながら、まるで今目の前で起こっているかのように話すのが印象的だ。いつもメンバーのこと、家族のこと、イベント参加者のことを考え動き回っている。「忙しくて元気じゃない」と笑いながら話す谷口さんだが、すでに視線はこれから実施するイベントに向けられている。今後も「神戸ウエディング会議」の動きに注目していきたい。

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