フェリシモ(神戸市中央区浪花町)主催の「神戸学校」が1月22日、神戸にゆかりの深いPGA認定プロゴルファーの古市忠夫さんを迎えてエスパスフェリシモホール(須磨区)で開催された。テーマは「頑張れることへの感謝」。
古市プロ題材の書籍「還暦ルーキー」をもとに映画化された作品「ありがとう」は、大きな話題を呼んだ
古市さんは神戸市長田区鷹取商店街でカメラ店を経営しながら趣味としてゴルフを嗜(たしな)んでいたが、1995年に起こった阪神・淡路大震災で人生が180度変わった。家財を一切失うとともに、長年親しんだ商店街や家々を焼失し、たくさんの人たちの死にも直面。それ以降、地域の復興に奔走し、街づくり協議会の副会長として防災に強い街づくりに取り組み、震災後、神戸で最初に区画整理を終えた。
その後、自らの復興としてプロゴルファーを目指し、還暦前となる2000年9月プロテスト合格。2002年の関西プロゴルフグランドシニア選手権優勝をはじめ計8勝。2004年、2005年にはシニアツアーシード権も獲得し、タイガー・ウッズと夢の対戦も実現した。古市プロを題材とした単行本「還暦ルーキー」をもとに映画化された作品「ありがとう」(主演=赤井英和さん)は大きな話題を呼んだ。
「これからどうやって家族を食べさせていこう」とぼうぜんとする中、偶然焼けずに済んだ愛車に残されていたゴルフバッグ。地域の復興とともに自らの復興としてプロゴルファーを目指した古市さんは、20代、30代の若い選手が中心のプロテストで合格を果たした力を「今ここに生きて頑張れることに感謝する力」、つまり「感謝力」であると話す。震災を経験し感謝することの大切さとそこから生まれる力を感じ取った古市さんは「才能と努力だけではなく一番大事なのは『感謝力』。『才能+努力+運』ではなく『才能×努力×感謝力』が結果を導く。才能も努力も少ない僕が若い選手たちに勝てたのは、『感謝力』の差」と語った。
また「感謝の気持ちは、人の心を大きく、美しく、若くする。お金を失うことは小さいものを失い、信頼を失うことは大きなものを失う。しかし、勇気を失うことは全てを失う。その『勇気』とは『積極性と感謝』。積極性は歩き方を見れば分かり、感謝力はあいさつを見れば分かる」と話し「積極的な勇気、真(まこと)の勇気を持って頑張りましょう」と講演を締めくくった。
古市さんは現在も自治会長として地元の消防の指導に取り組み、また、一人暮らしのお年寄りが集う「ふれあい喫茶」を開くなど、プロゴルファーであることとともに地域住民の一人であることを常に心掛けた活動に取り組んでいる。
フェリシモが主催する「神戸学校」は1995年の阪神淡路大震災をきっかけにスタートし、今回で165回目を数えた。参加料は全額、「あしなが育英会」の神戸レインボーハウス運営支援に活用される。