特集

2年に1度の芸術祭「神戸ビエンナーレ2013」開幕-テーマは「さく『saku』」

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■神戸ビエンナーレとは
メリケンパークや神戸港エリア、兵庫県立美術館、三宮、元町など各会場で開催する芸術祭。今年は「さく『saku』」をテーマに、神戸が培ってきた多様な文化力と先取性を生かし、現代社会を彩るさまざまな文化活動に光を当てる。テーマには「既成概念を切り裂く(さく)先に新しいものが咲く(さく)」という思いが込められているという。

■アート イン コンテナ国際展

輸送用コンテナの内部を展示空間とする現代アートのコンペティション。アーティストの自由な発想で、40フィートコンテナという限られた空間内に凝縮したアートの力と可能性を表現する。138作品の応募の中から入選作品25作品を決定。

審査員からの講評は「応募者がこのコンペティションで何を打ち出せば良いのか模索している部分があるのではないかと感じた。主催者側がそういったこのコンペの特徴を明確に示す時期に来ていることも事実」。(写真=大賞受賞作品 安蔵隆朝(千葉県)「Light flower of Two faces」)

■創作玩具国際展
木・紙・布・アクリル・金属など素材を生かした芸術性のある斬新な玩具を自由な発想と技法で創作する。48作品の応募の中から入選作品15作品を決定。

審査員からの講評は「人類史とともに存在し続けた玩具だから、新しいフォルムや機能を発見し、驚きを与えるものを作り出すことは並大抵のことではない。審査員の誰一人として大賞を推す者がなかったのは残念だが、それは無意識のうちにインプットされた玩具史の重み、深みがあったからでは」。(写真=準大賞作品 高橋綾(埼玉県)「ku・ne・ri」)

■コミックイラスト展
CGが表現のツールとして普及し、同人誌即売会やイラスト投稿サイトの充実によってコミックイラストの世界が広がっている。これらの分野の新しい才能を積極的に見いだし、社会に広く紹介していくことを目指す。応募作品はCGや水彩、色鉛筆など38作品の応募の中から入選作品29作品を決定。

審査員からの講評は「日本初のジャンルだと思うので、今後日本全体で盛り上げてほしい。今回のコンペティションがその一助となれば」。(写真=展示コンテナ内の様子)

■神戸港・海上アート展
神戸の持つ最大の資源である港を舞台とした「海上アート」作品。神戸港遊覧船の既存航路上の埠頭(ふとう)や突堤などに作品を設置し、既存の遊覧船から作品を鑑賞する。50作品の応募の中から入選作品5作品を決定。

審査員からの講評は「周りの環境に対するスケールの大きさというのが一つの課題だった。これは今後の課題でもある。非常にスケールの大きな環境の中で提案するので、オブジェという概念を取り払い、いかに与えられた環境と一体化した作品をつくり上げていくのかが今後の楽しみであり、期待している」。(写真=大賞作品 鵜沢隆(茨城県)「視線の方舟(アーク)」)

■グリーンアート展
人と自然の関わりを見直し、自然と共にある環境づくりが求められている中、国際的にも新分野として位置付けられている「グリーンアート展」を実施する。43作品の応募の中から入選作品8作品を決定。

審査員からの講評は「生きた植物を使ってアートを表現するというのはなかなか難しい。いろいろな分野からチャレンジしていただいたが、生きた植物の生かし方がまだ不十分。今後入選者にはそういった点を反映した作品制作を期待する」。(写真=大賞作品 東巧(東京都)「Mirai-Cube-きらめく未来に咲く、輝く緑とのインターフェイス-」)

■ペインティングアート展
JR神戸駅から元町駅間の高架下空間を舞台に、大きな壁面を生かした新しい絵画表現を求めるコンペティション。52作品の応募の中から入選作品12作品を決定。

審査員からの講評は「人間にとっての原点の一つでもある『絵を描く』という行為を素朴に追求し、高架下という日常の空気感の中で、『大画面に描く』というこの企画は、体からの人間の開放をも意味する。選考された作品はいずれも生命力に根ざしている作品ばかり」。(写真=大賞作品 佐藤紘子(大阪府)「wherever you are now...」)

■開催について
吉田泰巳総合プロデューサー:ほかの芸術祭と比べて何から何までなんでも抱えるものは抱えようと思っている。アートの世界は閉鎖的、ほかの世界が分からない人は多い。こういう機会に普段接しないものに触れて新しいものを生み出してほしい。あらゆる角度から作品を見て評価しようと審査員も多分野の審査員を集めた。

11月9日には「ミュージック&アートステージ」の本選も予定しているので、音楽会の既成概念を切り裂く、今までにない新しい芸術の想像による画期的なステージ提案も楽しみにしていただければ。

大森正夫アーティスティックディレクター:神戸ビエンナーレは世界的にも異彩を放つ芸術祭。ヨーロッパやアメリカの芸術中心ではなく、日本の文化を中心に構成したものを世界に発信する唯一の芸術祭なので、真新しいものだらけ。神戸ビエンナーレは震災復興事業なので、単なる芸術祭ではない。新しいことをどんどん取り入れていく「神戸らしさ」を取り戻すきっかけになれば。

現代アートがほとんどだが、それだけがアートではない。神戸が発信してきたものが次の時代のアートを作っていく。今までアートに関心のなかった人たちが興味を持ってくれているのを感じている。

■取材を終えて
2007年に開催された第1回では約14万人だった来場者も、第2回には約16万人、第3回には約24万人と順調に客足を伸ばし、今回は30万人を目標に掲げる。朝晩には涼しい風を感じられるこの季節、アートに触れてみてはいかがだろうか。

乗船券付き全会場セット券=1,800円(シルバー=1,500円)、高校生以下無料。12月1日まで。各会場の開場時間や各会場を結ぶシャトルバスについては同芸術祭のホームページで確認できる。
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