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被災地をつなぐアート「白屋」の神戸展示開始-1月まで神戸に展示、来春台湾へ

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■きっかけとなった「ペーパードーム」

ペーパードームとは阪神・淡路大震災が直撃した同区野田にあり、同震災で焼失したカトリック鷹取教会(現在はカトリックたかとり教会と名称を変更)を地元の住民らが建設した紙の教会で、その後NGO団体の活動拠点にもなっていたもの。ここで行われた活動は国籍や性別、宗教などを問わず、震災後の復興に加え、民族間の交流の場としての役割も果たした。

2005年に大震災から10周年を迎えた神戸。役割を終えたと取り壊されることが決まっていたペーパードームだが、1999年に大震災に見舞われた台湾の訪日団が台湾への移築を提案、2008年に移築が完了した。現在は台湾の大震災で大きな被害を受けた台湾中部の地域再建と人々の交流の場として、また地域のボランティア活動の拠点として使用され、観光スポットにもなっているという。

■アートインスタレーション「白屋」
ペーパードームの移築をきっかけに2011年3月11日に発生した東日本大震災で被害に遭った地域もアートでつなごうと始まった同プロジェクト。今年3月11日に台湾を出発し、5月に石巻、8~9月に大槌、11月~神戸と巡り、来春に台湾帰郷を予定している。

「白屋」は5メートル×10メートルの木造小屋をイメージしたアート作品で、神戸で行われたアート制作には台湾から2人と仙台や神戸から6人のアーティストが参加した。アーティストは縦2.4メートル、横1.2メートルの板に思い思いの絵を描き、完成した板40枚を使って作品を完成させた。

それぞれの作品に具体的なタイトルなどは設けていないが、「ようこそ」をテーマに描いたという。風景画や人物画などそれぞれの個性あふれる作品が並んだ。台湾から参加した葉さんは「大震災にあった神戸と台湾、東北地方のアーティストが芸術の力で結びついた。震災を経験した人は経験を次の世代へつなぐきっかけに、経験したことのない人にもこの作品を見て何かを感じてもらいたい」と笑顔を見せていた。

■除幕式の様子
除幕式には大槌高校の生徒や神戸大学の学生に加え、同プロジェクトに関わったメンバーらが集合。全体を覆う赤い布を「神戸最高!」の掛け声とともに引っ張り全容が現れると、公園を訪れていたギャラリーからも大きな拍手が上がった。

同公園を管理する辻さんは「台湾で始まり、石巻、大槌から神戸に来た。この取り組みに参加したいろいろな人たちが集まって、みなとのもり公園で開催できることを心からうれしく思っている。たくさんの方に見に来てほしい」と呼び掛ける。

協賛する神戸ビエンナーレ2013のエグゼクティブディレクター・石原さんは「神戸ビエンナーレは4回目を数えるが、今回このような震災復興プロジェクトを神戸で開催できてうれしい。アートで震災復興と国際交流の推進を目指していきたい」とも。


■取材を終えて
先月28日から除幕式前日の今月3日まで壁画創作を行っていたメンバーら。仕上げに入った3日、神戸市中央区は雨模様で夕方から夜にかけて豪雨となっていた。アートに掲げた「新台湾壁書隊」の文字は一部が雨で流れてしまったが、メンバーは「それも屋外展示の面白さ。これを見る度に『あの日雨が降って大変だったよね』と記憶を共有できる。雨もいい思い出」と笑顔を見せていた。今後も多くの被災地と手を取り進行する同プロジェクトに注目していきたい。

完成した作品は1月17日まで神戸で展示される。
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