フェリシモ(神戸市中央区浪花町)主催の「神戸学校」が10月23日、進化生物学者の長谷川眞理子さんを迎えてエスパスフェリシモホール(須磨区)で開催された。テーマは「進化生物学から見る人間の道徳性」。
長谷川さんは行動生態学と進化生物学を専攻する進化生物学者。講演では、進化生物学者になったきっかけを「小さいころから生き物が大好きだった。2~5歳を過ごした和歌山県の田辺市は海や川などの自然に囲まれた地、そこが原点だと思う」と振り返った。
その後東京大学理学部生物学科に進学した長谷川さんは、ニホンザルやチンパンジーを研究。これまでに撮った写真を前方のスクリーンに映しながら「サルの顔はよく見れば見分けられる。一瞬では覚えられなくても、毎日見ていると分かってくる。わたしは250頭くらい識別した」と話した。
その後行われた質疑応答で、参加者から「クジャクは雄が着飾り、人間は女性が着飾るのはなぜか」と問われた長谷川さん。「クジャクに限らず多くの鳥は雄が着飾り、きれいな声でさえずる。鳥の場合、決定権は雌にあり、雄は雌に選ばれるようにアピールする。だが、人は鳥ではなくほ乳類。人間の繁殖システムはとても変わっていて、男も女もいろいろなものを見せびらかしている。表現の仕方が非常に複雑なのが人間」と答えた。
長谷川さんは総合研究大学先導科研究科教授、最近は人間の進化と適応の研究を行っているという。進化生物学とは「生物がなぜこのようにできているのか」を研究する学問。著書に「クジャクの雄はなぜ美しい?」「ダーウィンの足跡を訪ねて」などがある。
フェリシモが主催する「神戸学校」は1995年の阪神淡路大震災をきっかけにスタートし、今回で162回目を数えた。参加料は全額、「あしなが育英会」の神戸レインボーハウス運営支援に活用される。