映画「その街のこども 劇場版」が関西で先行公開される中、シネ・リーブル神戸(神戸市中央区浪花町)で12月10日、主演の森山未來さんと脚本の渡辺あやさん、プロデューサーの京田光広さんを迎えて舞台あいさつが行われた。
出演に関するエピソードを語る森山未來さん、トランスフォーマー提供
阪神・淡路大震災からちょうど15年目にあたる今年1月17日、NHKで放送されたドラマ「その街のこども」は、実際に震災を体験している森山未來さんと佐藤江梨子さんの切なくリアルな演技に加え、心の傷を抱えたまま生きる若者たちを優しいまなざしで描いた渡辺あやさんの脚本が大きな話題を呼んだ。その後同作品は第36回放送文化基金賞を受賞し、「その街のこども 劇場版」として、NHKの制作したドラマとしては前代未聞の全国公開が決定。ドラマ放送時にはカットされた未公開シーンを含む、再編集バージョンでの上映が実現した。
同館での舞台あいさつは、当日朝からのチケット販売前から行列ができるほどの人気に。同作について、関西の公の場でコメントする機会がほとんどなかった森山さんのあいさつに、立ち見客を含め150人以上の観客が集まった。
「先月、西元町のカレー店で森山くんに会ったのがきっかけ。地元の映画館でぜひ舞台あいさつをやろうという話になった」と京田さん。それに対して森山さんは「神戸に住んでいた学生時代、映画を見るためにシネ・リーブル神戸によく通っていた。その映画館で舞台あいさつができるなんて」と笑顔を見せた。この日が最終上映となっていたが、急きょ舞台あいさつが決定したため年明け1月7日まで上映が延長されることになった。
2008年から3年にわたって、「プレミアム10」「未来は今」「その街のこども」とNHKの阪神・淡路大震災番組に出演している森山さんは「(被災者の役として)フィクションに乗っかる勇気がなかった」と話す。「昨年放送の『未来は今』に出演した際、遺族に話を聞く機会があった。故人について踏み込んだことを聞けずにいたところ、遺族の方から『こうやって故人の話をできるのはうれしい。生きていた事を分かってもらえるから』と言っていただき、ようやく現実に向き合えた」と出演を決めた経緯を話した。
渡辺さんは「(阪神・淡路大震災の犠牲者を追悼し復興を願う)『神戸ルミナリエ』が開催されている時期に、この映画が上映されているのは奇跡的な出来事。しかもルミナリエ会場の前で舞台あいさつができたのは良かった」と話し、その言葉に京田さんと森山さんもうなずいた。
同館で来年1月7日まで上映中。同作は来年1月15日より東京都写真美術館ホール(東京都目黒区)、池袋シネマ・ロサ(同豊島区)ほかで全国公開。