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阪神淡路大震災から20年、被災地からのメッセージ

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「阪神淡路大震災1.17のつどい」の竹灯篭

■「阪神淡路大震災1.17のつどい」(神戸市・東遊園地公園にて)

「1.17希望の灯り」

震災3年目となる1998年から始まり、形を変えつつ続けられてきた、神戸市などが主催する「阪神淡路大震災1.17のつどい」は117日午前5時、東遊園地公園(神戸市中央区加納町6)内のグラウンドに「1995 1.17」の文字状に並べられた竹灯籠内に点灯。その後、続々と参加者が集い、例年の倍以上となる約14000人が参加。震災が発生した午前546分には時報と共に黙とうがささげられた。

黙とうの後、「慰霊と復興のモニュメント」周辺の献花所で遺族や市長らが追悼のあいさつと献花を行った。

久元喜造市長は追悼の言葉の中で、「神戸は国内外の支援のおかげで復興することができた」と述べ、「私たちは感謝の気持ちを忘れることなく、防災や減災、安全、健康の分野で他都市に貢献し続ける都市でありたい」と、他地域へ貢献できるまちとなる強い決意を表した。

午後2時からは、2011311日に発生した東日本大震災への追悼のため、「3.11」の数字状に並べた竹灯籠へ点灯。午後246分に黙とうがささげられた。

その後、参加者による記帳と献花の人の列は絶えることなく続き、終了時の午後9時までに約101000人が参加した。

■地元住民で建設した慰霊のモニュメントにボランティアが集合(神戸市・御蔵北公園にて)

激甚被災地の一つである、御蔵北公園(神戸市長田区御蔵通)では、地元住民が震災の記憶をとどめようとモニュメントを建設し、毎年117日午前546分に慰霊祭を開いている。

今年は20年の節目ということもあり、20年前のボランティアや支援者も集まり、温かい豚汁を手に同窓会のような雰囲気になった。

東日本大震災以降、気仙沼で復興支援に携わっている白鳥孝太さんも、20年前に東京から神戸にボランティアに駆け付けた一人。「20年前に学生だったので神戸に駆け付けたことがきっかけで災害ボランティアの世界に入った。今でも神戸の経験を胸に、東日本の復興に関われていることを誇りに思う」と話す。

■白いカーネーション1,500本で追悼(西宮市・西宮震災記念碑公園にて)

西宮市は117日午前930分より、「阪神・淡路大震災20年 西宮市犠牲者追悼式」を市民会館アミティホールで開催した。式は犠牲者をしのび哀悼するとともに、震災で得た貴重な教訓を次世代に継承し、災害に強いまちづくりを進めていくため、新たな決意を誓うものとして開催。

開式前に西宮出身・在住のジャズピアニスト、金谷こうすけさんが亡くなった方への思いを「追悼のしらべ」のピアノの音に乗せて演奏。今村岳司西宮市長が犠牲者名簿を献納し、黙とうや追悼の言葉がささげられた。

16時まで西宮震災記念碑公園(西宮市奥畑5)に記帳所を設置。訪れた人には1500本の白いカーネーションが配布された。同園では、今村岳司同市長が「今から20年前の今日午前546分、震度7の大地震が本市を襲った。街は壊滅的な被害を受け、尊い多くの命が奪われた。震災で亡くなった1146名の御霊(みたま)に哀悼の誠をささげ、市民が安全に暮らせるまちづくりを進めることを誓う」と、哀悼の言葉とともに未来への誓いを述べた。

同園には昨年より400人多い2400人が追悼に訪れた。

震災がもたらす「心の壁」に向き合う(神戸市・ポートピアホテルにて)

20年の節目に、震災がもたらした疎外感に向き合おうとする試みもあった。「よいアイデアを広げよう」(Ideas Worth Spreading)を理念とする米国発祥のトークイベント「TED」を神戸で手掛ける団体「TEDxKobe」によるサロン形式のイベント「TEDxKobeSalon」だ。

同イベント発起人の一人である鈴木敏郎さんは震災当時、京都で一人暮らしをしていた大学生。明石市内にあった実家が全壊の被害を受け、避難生活のストレスから母親も体調を崩した。しかし実家には戻らなかった。そうした自分が震災を語るとき、「自分は被災者なのか部外者なのか、心にもやもやとした思いがあった」という。「そんな自分と同じような思いを持つ人にとっても20年の節目に向き合うべき『バリアー』があるはず」と、同イベントのテーマを「Facing Barriers」(バリアーに向き合う)とした。

スピーカーとして、NPO法人「市民活動センター神戸」の実吉威(じつよしたけし)さんが登壇し、「被災者」や「ボランティア」と「ひとくくりにして呼んでしまうことで、そこからこぼれ落ちてしまうものがたくさんある」と指摘。「誰にも人をカテゴライズして決め付けてしまうところはあると思うが、少しだけ敏感になって、相手の尊厳や、一人一人のリアリティーへの想像力を大切にすることで見えてくる世界がある」と力説した。

■「阪神・淡路大震災20年 第75回定期演奏会」(西宮市・兵庫県立芸術文化センターにて)

兵庫県立芸術文化センター(西宮市高松町)で2015116日~18日、「阪神・淡路大震災20年 第75回定期演奏会」が開催された。

撮影:兵庫県立芸術文化センター 飯島隆)

同センターの芸術監督であり指揮者である佐渡裕さんは演奏に先立ち、「震災後10年もたたないうちに兵庫県立芸術文化センターを設立しようという話が出たが、本当に建てていいのかという葛藤もあった。こうして20年たち、街もきれいに整備された。20年の節目には、マーラーの『復活』を演奏したいとずっと思っていた」と話す。

鳴りやまない拍手の中、佐渡さんは指揮台に上がり、「通常、マーラーの後はアンコールをやらないが、今日は特別に用意した」と述べ、アンコールにバーンスタインのキャンディードから「Make Our Garden Grow(僕らの畑を耕そう)」を演奏した。

演奏に合わせて表示された字幕にも、このコンサートに込められた「メッセージ」が感じられた。その一部を以下に紹介する(日本語訳は編集部で行った)。

We're neither pure, nor wise, nor good (僕らは純粋でもないし、賢くも良い人でもない) 
We'll do the best we know. (でも、知る限りのベストを尽くそう)
We'll build our house and chop our wood (僕らの家を建て、まきを割り)
And make our garden grow… (そして、畑を耕すんだ)
And make our garden grow. (そう、畑を耕そう)」

神戸市内で飲食店を営む兵庫区在住の永井公二さんは「マーラーの復活を聴くのは4度目。今回は震災復興への願いがこもっているせいか、一番気持ちが入っていると感じた。メッセージを伝えやすくするための字幕もありがたかった」と感想を語った。

■取材を終えて

震災20年という節目に、われわれは何を考え、伝えるべきなのかに悩みながらまとめた特集記事でした。「イベントを紹介するのではなく、その思いを伝えよう」と意識してみましたが皆さんに伝わっていれば幸いです。(神戸経済新聞編集部/ 舟橋健雄)

20周年を迎え、追悼に参加していつも以上に今あることのありがたさを感じた一日でした。震災を知らない世代も増えてきましたが、それぞれの立場からこの時を共有することに深い意味があると思います。(西宮経済新聞編集部/林拓真)

震災を体験していないながらも、西宮市民として20年の節目を迎えられたことに何かしら運命めいたものを感じる1.17でした。さまざまな立場から見た三者三様の「震災20年」を感じていただけたら幸いです。(西宮経済新聞編集部/ 加藤槙子)

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