コロナ禍で初のオンライン配信も
提供:Rethink Creator PROJECT 制作:神戸経済新聞編集部
「クリエイターの地産地消」をコンセプトに、「地元を誰かに任せない」とキャッチコピーに掲げる「Rethink Creator PROJECT(リシンククリエイタープロジェクト)」の地域セミナー「Rethink Creator Seminar 神戸」が7月2日・3日、神戸・旧居留地のベイ・ウイング神戸ビル(神戸市中央区江戸町)10階にあるコミュニティー型ワーキングスペース「ON PAPER(オンペーパー)」で行われました。
プロジェクトの説明をするクリエイターズマッチの代表取締役・呉京樹さん
主催は「クリエイターが働きやすい世界を創造する」というビジョンを掲げ、制作・開発・教育の3つの領域でサービスを展開しているクリエイターズマッチ(東京都渋谷区)。教育事業では、より多くの人が制作の仕事に就けるようサポートも行っています。協賛は地域社会の課題解決に取り組む「Rethink PROJECT(リシンクプロジェクト)」。
日本各地のクリエイターを発掘・育成する「Rethink Creator PROJECT」が始まった2018(平成30)年から協賛している「日本たばこ産業(以下JT)」(東京都港区)。これまで国内のさまざまな分野で地域社会への貢献活動を行ってきたJTは昨年6月8日、様々な団体とパートナーシップを基盤に、地域に根差した施策を有機的につなげ発展させていきたいと「Rethink PROJECT」を始動させました。
「視点を変えて考え、それを形にして世の中に発信できる人(Rethink Creator)」を生み出していくプロジェクト「Rethink Creator PROJECT」では、身近な魅力を発見する方法(Rethink)とそれを簡単にデザインに落とし込むための方法(Create)を学ぶセミナーを全国各地の会場で開催。クリエイティブな「考え方」を中心に学ぶセミナーで、経験の浅いクリエイターや、ライター・デザイナー経験のないクリエイター「予備軍」などが新たな気づきを得ることができます。
「学びの場(セミナー)」と「挑戦の場(クリエイティブコンテスト)」の提供を通じて、現在(7月5日時点)は約6,900人がプロジェクトに登録。昨年までに全国38地域で延べ63回行われたセミナーには約2,300人が参加しています。今年は徳島での開催を皮切りに、全国17地域・18セミナーの開催を予定。
「デザイン都市・神戸」をスローガンに掲げ、アーティストやクリエイターの活動や場所を支援する神戸市との共催で3年目となる神戸セミナー。より多くの市民に参加機会を確保するため年2回行われており、2019(平成31)年は3月9日・4月1日、2020年は1月30日・2月8日に実施されました。
今年はコロナ禍を踏まえて会場とオンラインの両方から参加できる初のハイブリッド形式で行われました。7月2日は会場で29人、オンラインでは46人、3日は会場で24人、オンラインでは45人が参加しました。
オンライン参加者の画面イメージ
スタッフは全員PCR検査で陰性を確認してから現地入りし、参加者にはウェブサイトで新型コロナウイルス感染症対策を十分に説明。会場の入り口では体調確認表の記入と検温、手指消毒とマスク着用を求め、ソーシャルディスタンスを取って座席を配置するなどの感染対策が取られていました。
体調確認表の記入後に検温
クリエイターズマッチ教育部部長・樋口淳さんの司会進行で行われた神戸セミナー。2日のメイン講師は鳥取県米子市でWEBデザイン・広告・動画制作やSNSの運用サポートなどを行っている「GOOD GROW」代表取締役の亀井智子さん、3日は東京都で広告デザインをメインにスクール講師も行うフリーランスクリエイターの下田裕美さんが務めました。
2日間の地域講師を務めたのは神戸生まれ、神戸育ちの佐藤貴英子さん。神戸のアパレル会社で営業マネージャーとして働く佐藤さんは「Rethink Creator PROJECT」1期生でもあり、「Rethink Creative Contest(リシンククリエイティブコンテスト)」では最優秀賞「Rethink Creator賞」を受賞しています。その後、フリーランスとしてデザイン業務に携わり、今年から始めた農業とデザインをつなげる活動もしています。
「Rethink講座」の様子
セミナーは30分の「Rethink講座」と1時間30分の「Createワークショップ」で構成。「Rethink講座」では、「Rethink=視点を変えて考える」ための「属性を見る(FILTER=フィルター)」「内側を見る(INSIGHT=インサイト)」「印象を見る(CAPTA=カプタ)」という3つの方法が説明されました。
不特定多数ではなく「温泉が大好きな自称温泉マニアの叔父さん」「パンが大好きな宮城県の友人」「飲まさないでが口癖のお酒好きの女性上司」というように伝えたい人や物を具体的に決めることで「見慣れてしまった地元・神戸の魅力を探すこと」がフィルターです。
伝えたい相手に寄り添うことで、その人に「なぜ伝えたいと思ったのか」「こういうことを伝えてあげたら喜んでもらえそう」と内側まで見るのがインサイト。その理由やメッセージが情報発信のコミュニケーションの方向性になります。
「正確でかたい」情報のデータに対して、「自由でやわらかい」情報がカプタです。2日のセミナーでは大正時代に敷設された水道管の上にできた神戸・水道筋にある「水道筋商店街」を「商店街の活性化に取り組む若社長」に伝える場合を例に挙げていました。佐藤さんは「8つの商店街と4つの市場 水道筋商店街 兵庫県神戸市水道筋4丁目」がデータ、カプタは「なんでも揃う四次元ポケット 水道と人の通り道」と紹介していました。データ情報が溢れている世の中だからこそカプタ情報を意識してみることで、コピーの種となる「印象を伝える言葉」を見つけることができます。
会場の参加者に配られた資料
「Createワークショップ」では、「Rethink講座」で学んだことを神戸で撮影された写真のコピーを考えることで実践。「フィルターを通して、伝えたい相手を想像する」「写真から感じられるカプタをたくさん見つける」「インサイトに寄り添って、キャッチコピーをつくる」という3つのステップで進められ、会場の参加者はメモ用紙にアイデアを書き込み、オンライン参加者はチャット機能を使ってアイデアを会場に伝えました。
用意された写真は「そばめし」「BE KOBE(つくはら湖)」「KOBEスイーツ」。観光客の撮影スポットとして神出山田自転車道「つくはら大橋休憩所」(北区)にあるシビックプライド(市民の誇り)を表す「BE KOBE」モニュメントを誰に伝えたいかを考えるワークでは、参加者から集められた「日本一周をしている学生(震災を経験していない)」「神戸は海・港のイメージと思っている東京の友人」「自然を愛するインスタグラマー、アウトドアな趣味」「インスタ映え狙うギャル」などの候補から、「(スポットを多くの人に知ってもらうためには)やっぱり写真をSNSにアップしてもらいたい」という意見から「インスタ映え狙うギャル」が選ばれました。
参加者から集められたカプタ
「エモい場所見つけた」「ここまで来てこそ神戸市民」「ここ、どこ?」「隠れBE KOBE」などのターゲットに伝えたいカプタ情報を書き出すワークが行われ、最後のステップでは集まったキーワードを使ってキャッチコピーを考えました。「汗の数だけいいね!」「#朝活 #初サイクリング #尊い #自転車」「いつもはヒール。今日はスニーカーで。」「渋谷でプリクラよりここで朝活派」などのアイデアの中から、佐藤さんがお気に入りのフレーズ「好きピ」が入った「好きピと隠れBE KOBE」というキャッチコピーが選ばれました。亀井さんが会場やチャットの意見を聞きながらリアルタイムでレイアウトし、ポスターが完成しました。
亀井さんがリアルタイムでポスターをデザイン
このほか、2日間の「Createワークショップ」では、「留学先で出会った広島の友人」に伝えたいキャッチコピー「オコノミソースの別の顔試してみない?仕上げのソースはドロやけど」、「遠距離恋愛、初の神戸デートの彼女」に伝えたいキャッチコピー「神戸とカレのあま~いおもいでの味」のポスターが完成しました。
2日間のセミナーには、20~40代を中心に10代~50代の会社員、フリーランス、パート、学生、会社経営者、主婦などさまざまな職業の男女が参加。アンケートでは「いままで悩んでいたコピーを作る発想の出し方や、デザインで何をベースに考えると良いかが分かった」「短時間であったが、プロがどのような工程でポスターを考えているか分かった」「実際にデザインを仕事にしている方の話が聞けてよかった」「頭では分かっていても、なかなかできなかった部分なので、ワークショップで行ったことを今後生かしていきたい」「『視点を変える』と無限に伝えられることがあるように感じて、とても面白いと思った」など前向きな感想が多く寄せられました。
神戸のアパレル会社員&フリーデザイナー&農家の佐藤貴英子さん
佐藤さんは最後に「伝えたい相手を特定することで気持ちを伝えるアイデアが出てくるというのは、このセミナーを受講してハッとされられた部分。私自身、受講したことによっていろんなものが面白くなってきて、以前より毎日が楽しく生き生きしています。皆さんも身近にいる人のことを考え、ちょっと寄り添って伝えることで変わってくると思うので参考にしてもらえたら」と話していました。
神戸では、会場となった「ON PAPER」を運営するイディーと神戸市も連携して、「誰もがクリエイターになれるまち」を目指し、セミナーとデザイン講座を通して神戸からクリエイティブな人財を創出する独自プロジェクト「Rethink Creator PROJECT 神戸特別版」も実施しています。デザイン制作(広告制作)の基本的な制作方法や考え方を簡単な画像制作やバナー広告などを題材にした課題制作と合わせて学習し、基礎的な技術と知識を身に付ける講座として展開します。
主なターゲットは「デザインのスキルを磨き仕事につなげたい人」「デザインの基本を改めて学び直したい人」「これから本格的にデザインを学びたい人」。セミナーを受講した人でプロジェクトが設定する諸条件を満たした人が受講対象で、これまで第1期・第2期合わせて30人の修了生を輩出しています。
同プロジェクトのPRコピーを考えるワークショップからできた作品は、再整備が行われていたJR三ノ宮駅中央改札口南側通路(2019年)、阪急神戸三宮駅北側(2020年)の仮囲いに掲示されました。
JR三ノ宮駅中央改札口南側通路に掲示された「Rethink Creator PROJECT 神戸特別版」受講生の作品
セミナー終了後には、同プログラムの内容や申込み方法などの説明会も行われました。今期の「デザイン講座」は、基本講座を7月30日~8月21日までの間に4回、発展講座は9月17日~12月10日までの間に9回行われます。
豊永太郎さん
豊永さんは「神戸市では、既存産業の高付加価値化やイノベーションを誘発することができる産業分野を『都市型創造産業』と定義し、その集積に向けた取り組みを進めています。都市型産業に従事するクリエイターなどの創造的な人財が市内の企業とコラボして新たな商品や新たな販路を開拓していくビジネスチャンスを見つけるお手伝いすることを目的としています。今回のプロジェクトはクリエイターの地産地消による地方創生を目指しており、我々の理念とピッタリ合う事業と考え一緒に取り組んでおり、神戸特別版の修了生で諸条件を満たした人は市内の企業にも協力いただき仕事を提供するという出口まで見据えたプロジェクトとして進めています」と話しました。
井上雄嵩さん
井上さんは「創業41年の当社は神戸で広告制作・デザインの仕事をしています。神戸市や兵庫県の広報誌、民間企業のホームページなどを手掛ける中で、神戸の街ととても関係性が強いと感じています。当社としても地元が元気になることを重要視しており、このプロジェクトに協力することで少しでも地元への恩返しになればと思っています」と話しました。
中根聡子さん
中根さんは「地域と連携したプロジェクトを行うのは難しいことで、神戸市の協力があってこそ成り立っている取り組みだと思います。近隣の自治体も関心を持ってくださっており、『一緒に何かできないか』と声を掛けていただくこともあります。デザインの力はとても大きいので、この取り組みが広がることで地域が地元デザイナーや企業とつながり、地域が抱える課題を解決するきっかけにもなればうれしいです」と話しました。
「Rethink Creative Contest」の説明をするクリエイターズマッチ教育部の部長・樋口淳さん
今回のセミナーで学んだことを生かす「挑戦の場」として誰でも参加できる「Rethink Creative Contest(リシンククリエイティブコンテスト)」が今年も開かれます。今年のテーマは「地元のアフターコロナをRethink!」。参加者が暮らす(所縁がある)地域の写真に考案したキャッチコピーを配置して作成したA4タテサイズのポスターを応募するもので、今年度の懸賞詳細は未定であるものの、昨年度は「Rethink PROJECT賞(最優秀賞)」「優秀賞」に選ばれた人には賞金を贈呈。今年度の募集期間は7月中旬~10月10日、応募要項は近日公開予定です。