■取り組みのきっかけ
2011年から社会貢献活動をはじめ、児童養護施設に入所する高校生を中心にロボットの操作を教え、美容事業関連で就職活動にプラスになればと職業体験学習などの活動をしてきた同団体。今年も同様の活動を続ける企画があったが、内部で協議を重ね、「県内の福祉作業施設で生産可能なスイーツを、拡販の見込める神戸土産として商品化する」ことを目標に、企画や企業マッチングを進めていた。
販売は神戸市役所内の障害のある人たちが働く施設・作業所の手づくり商品専門ショップ「神戸ふれあい工房」。同団体によると、神戸市内に本社を持つ企業と福祉作業所のコラボレーションによる神戸土産商品の開発・販売は市内で初めてという。価格は未定。
■賛同企業
趣旨に賛同し参加するのはケーキの製造や販売を手掛ける「ファクトリー・シン」を運営するシンケールス(神戸市東灘区)と剣菱酒造(同)の2社。商品開発と製造指導を「ファクトリー・シン」でパティシエを務める畠中雅明さんが担当し、原材料の一部となる清酒を剣菱酒造が供給する。
■商品について
販売する商品は日本酒を使用したパウンドケーキで、商品名は「剣菱×Shin Japanese SAKE cake」。「灘の生一本 栗」と「瑞穂黒松剣菱 けし」の2種類。企画の段階では酒かすを使った商品の開発を目指していたが、時期的なこともあり酒そのものを使った。試食会では「酒の香りが前面に出ているのではなく後味で香るのが上品」「スイーツなので日本酒が苦手な方にもいいのでは」などの意見が寄せられた。
9月に行われた試食会で畠中さんは「酒自体の良さや風味、香りを伝えられる商品にしたくて、余計なものは加えていない。白餡(しろあん)を生地に混ぜ込んでしっとりさせている。酒を十分に生かした商品になったのでは」と自信を見せる。
■調理指導の様子
10月16日、17日に県内の作業所で行われた調理指導では、畠中さんから生地の混ぜ方や焼き型への充填(じゅうてん)方法、実際のオーブンで焼き加減を見ながらの温度調節・焼き時間の修正など一つ一つの作業を確認しながら進めた。それまでにレシピを参考に試作を重ねていた作業所の担当者らは、試作段階でうまくいかなかったことなどについて質問を投げかけ、熱心にメモを取り、畠中さんの説明に聞き入っていた。
(写真は「クローバーの会 友が丘作業所」での調理指導の様子)
■商品開発について
畠中さん:福祉作業所で製造する前提があったので、複雑な工程を省く工夫をした。実際にはレシピを通常のパウンドケーキとは違う配合にすることで、技術を配合でカバーできればと試行錯誤を重ねた。
設備的にどういうものが作れるのか、日ごろから作りなれているものに近い商品の方が無理がないだろうかなど作業所のみなさんやプロジェクトに携わる方と協議を重ね、約1カ月かけて開発した。作業所の皆さんはとても勉強熱心。作業を見ていてもこの様子なら全く問題ないと思う。
作業所メンバー:こんなに酒の香りや味がするスイーツは初めて。酒の入ったケーキを食べるのも初めてだったが、試食するとしっとりとしておいしかった。畠中さんが配合や作業工程を工夫してくださっているので、作り始めから焼き型に充填するまでワンボールで作れるのは作業所にとってとてもありがたい。製造指導で教えていただいたことを生かして今後も作業を進めていきたい。
兵庫県中小企業団体中央会の谷﨑友亜さん:社会貢献事業は毎年行っているが、3年ごとに取り組みを見直し新しい取り組みを進めている。神戸土産のスイーツ開発は今年からの取り組み。働き手と収益を上げる継続販売で、ここからもっと広がりを持たせられれば。
■販売について
11月21日、22日に行われる「神戸マラソンEXPO2014」で限定200個の販売を皮切りに、兵庫県内の福祉作業所での製造と同店での販売を開始する予定。福祉作業所の課題である「新商品開発の企画と広報活動」は引き続き同会が支援する。「2014年中の販売目標数は400本。作業所の皆さんが作ってくれたスイーツは売り切りたい」(神戸ふれあい工房の野村和美店長)。