フェリシモ(神戸市中央区浪花町)主催の「神戸学校」が5月22日、前世界銀行副総裁の西水美恵子さんを迎えてエスパスフェリシモホール(須磨区)で開催された。テーマは「私たちの国づくりへ・雷龍の国ブータンに学ぶ」。
西水さんの「『この国に生まれて本当によかった』と思ったことはありますか」という参加者への問いかけから始まった講演。その中で西水さんは「仕事で世界中を周ったが、一番勉強になったのはブータンだった」と話し、「豊かさはお金では買えない。ブータンという国と出会ってから日本は憲法を守れているのか心配になった」と当時の心境を明かした。
西水さんは「国民にどうやって幸せを与えるか、とよく聞かれるが、それはとんでもない思い違い。経済成長が国家の目標であってはならない。成長は手段であり、富の増加は幸せには直結しない」と話す。「国民が肌で感じる思いやりは行政を根本的に変える。安心や幸せを与えることの効果をブータンから学んだ」とも。
続く質疑応答では会場から「大物権力者を前に意見できるのはなぜか、きっかけはあったのか」と問われた西水さんは「わたしと同じ人間なのに人として生きていけない人と生活をしていると、自分の中に怒りが蓄積される。その現状を自分の国の国民なのに、改革時はわたしの方が知っている。正しいことを正しくやるのが世界銀行の役目。それを全うしただけ」と答え、「もともとけんかは好き(笑)。勝てば勝つほど楽しい。世界銀行の仕事では負けたことがなかった」と笑顔を見せた。
経済学者の道を歩んでいた西水さんの人生を変えたのは、エジプトの貧民街で最期を看取った幼女との出会いだったという。その際に抱いた怒りが西水さん自身を変え、「政治力のない貧民のために正しいことを正しく行う勇気あるリーダーたちの味方、正義の味方になろう」と決意し、世界銀行に入行。以後23年間、「貧困のない世界」という夢を追いかけて貧村やスラムにホームステイする一方、国家元首らと直談し、数々の国の発展に貢献してきた。
フェリシモが主催する「神戸学校」は1995年の阪神淡路大震災をきっかけにスタートし、今回で157回目を数えた。参加料は全額、「あしなが育英会」の神戸レインボーハウス運営支援に活用される。