神戸・三宮センター街で式典用品や季節の装飾品などを扱う老舗雑貨店「毛利マーク」(神戸市中央区三宮町2、TEL 078-331-0874)の100年史が小冊子として完成し、6月5日より無料配布している。
トロフィー、バッジ、旗、名札、造花、クリスマスオーナメントなどを周辺施設や一般家庭に向けに販売する同店は1914(大正3)年、創業者の毛利岩太郎さんにより「毛利商店」として現在と同じ場所で創業。1930年代にはシンガポール店も出店し、七宝焼、神戸薩摩、真珠など欧米人が好む日本製品全般を輸出していたという。
先月、毛利二三夫さんの後任として藤井淳史さんが5代目社長に就任。藤井さんは、二三夫さんの長女で創業者・岩太郎さんのひ孫に当たる美香さんと結婚した後、2007年に脱サラし同社へ入社。同社が2014年に創業100年を迎えることを知った藤井さんは「こんなに素晴らしいことをもっと多くの人に知ってもらいたい」とまず考えたという。美香さんは「自分たちの家庭のルーツに誰も興味がないのでは」という思いから何もする予定はなかったが、藤井さんに後押しされる形で動き出した。
藤井さんは創業100周年記念事業「PAST100/NEXT100 毛利マーク」を企画。2014年に写真と商品で振り返る「毛利マーク100年展」を開催し、同事業の集大成として、「私と毛利マーク」をテーマにしたエピソードを一般募集した。これをきっかけに顧客や仕入れ先などから関係者でも知らなかった貴重な情報提供があり、独自の調査を加えながら創業時から戦前、戦中、戦後など、これまで振り返ることがなかった歴史が明かされていったという。
同社の歴史に興味を持った元地元記者の熊谷信哉さんも100年史製作を担当した美香さんに資料集めや考察などで協力。これまで同社に関わった彫金師の入江一考さんなどの話も聞きながら、ほぼ年表が完成した頃に2代目社長の保一さんが手書きで残していたメモ(通称=保一メモ)が見つかる。「保一メモ」のおかげで整合性が取れ、つじつまが合わなかった部分などが解決。100周年を機に歴史をまとめようと思い立ってから約3年がたったが、より正確な情報を基にした小冊子が完成した。
美香さんは「冊子にするに当たって割愛した部分も多い。もう少し深掘りしたいという気持ちも残る」と話す。藤井さんは「毛利マークの歴史背景には、当時の社会情勢や神戸の歴史が深く関わっており、より多くの方に知っていただく意味があると考えた。時間はかかってしまったが結果的に開港150年に当たる年に完成してよかった。多くの方に読んでいただきたいので、気軽に来店いただければ」と話す。
冊子はA5サイズ、フルカラー、中とじで12ページ。得意先や来店者を中心に無料で配布する。発行部数は1000部。