神戸市立王子動物園近くにある地域密着型ゲストハウス「ゲストハウス萬家(Guest House MAYA)」(神戸市灘区城内通4、TEL 078-940-2809)が6月20日、新型コロナウイルスの影響で帰国が困難となった訪日外国人などに対して無償で宿泊場所を提供するサービスを始めた。
オーナーは生まれも育ちも韓国・ソウルの朴徹雄(パク・チョルン)さん。約20年前の高校時代、第2外国語の日本語教師が企画した日韓学生交流会に参加した経験から、「国籍・文化・宗教が違っても、お互い尊重し合える社会をつくるには、個人と個人が交流しつながることが大切。世界中がつながれば、きっと世界は幸せになる」と思うようになったという。
日本への興味は日に日に増し、大学では日本語教育を専攻。「泊まれる交流拠点をつくる」という夢を実現するためワーキングホリデーで東京に滞在した後、東京の企業に就職した。その後、「多文化共生」を掲げてゲストハウスの開業を支援する東京・品川にある「宿場JAPAN」の存在を知り、約半年間の研修を受けた。
「泊まれる交流拠点」のイメージの中には地域コミュニティーの存在が必要と考えていた朴さん。開業する物件を探す中、地域コミュニティーが活発な「水道筋商店街」に強く引かれ、同商店街にある喫茶店などでのアルバイト経験を経て2年間ボランティア活動を行うことで地元の人たちとの交流を深めていった。
地元の人たちの協力を得て小児科の医院として使われていた一軒家を、木目を基調にしたシンプルでかわいさのある空間にリノベーション。2017(平成29)年7月22日、「小さな宿の感動から世界と地域をつなぐ」「神戸のふつうに出会う旅をここから」をコンセプトにしたゲストハウスの開業にこぎ着けた。
修業先である「宿場JAPAN」が新型コロナウイルスをきっかけに始めた活動に刺激を受けて今回のサービスを企画したという朴さん。外国人留学生出身の朴さんも困った時に多くの日本人に助けられた経験を持つことから「社会に恩返ししたい」との思いで、困難な状況におかれている留学生、旅行者、ワーキングホリデートラベラーが無事に帰国できるまで宿泊施設を無料提供することを決めた。
朴さんは「神戸は日本人と外国人が一緒に築いてきた街だと聞いている。日本が好きで訪日した外国人が、新型コロナの影響で困難な状況に置かれていると思うので紹介いただければ。国籍問わず、お互いに助け合うことで世界がつながればうれしい」と呼び掛ける。「小さな宿なので全ての帰国困難者を受け入れることは難しい。フードドネーションなど、取り組みに賛同いただける方の支援も募集している」とも。
同施設では、新型コロナ対策としてコモンルームの利用制限を設けるなどさまざまな対策を行っており、「個室テレワークブラン」「マンスリープラン」「コワーキングスペース」「オンライン宿泊(MAYA PRE STAY)」などの新プランも用意する。
予約・問い合わせ受付時間は8時~22時。同サービスの提供は7月31日まで(状況によっては延長の可能性あり)。