俳優の片桐はいりさんが出演する演劇「あなたが彼女にしてあげられることは何もない」が2月24日から、神戸の老舗喫茶店などを舞台に上演される。
昨年9月に始動した神戸市が推進するパブリックアートによる観光事業「KOBE Re:Public Art Project」の一環。同事業は、さまざまな分野で活動するアーティストが、神戸市内のアーティスト・イン・レジデンスに一定期間滞在し、テーマである「人新世」に基づいて散策、リサーチしながら、アーティストによる視点やアプローチから、地域に新しい価値を生み出し、新たな神戸の魅力、周遊観光資源を発掘することを目的としている。メインキュレーターは、俳優の森山未來さん。
今回上演する演劇は、都市と現代社会がはらむ危うさを縮図のように提示する作品。作・演出は、2022年刊行の小説「ブロッコリー・レボリューション」が第35回三島由紀夫賞に選出された劇作家の岡田利規さんが務める。
今月24日は、神戸の中華街・南京町にある創業46年の「喫茶しゅみ」(17時30分~)、25日は、萩原珈琲(コーヒー)が運営する創業60年の元町商店街の「元町サントス」(10時30分~)、26日は、元町商店街にある創業63年の「アルファ 本店」(15時30分~)、3月4日・5日(各回15時30分~)は、ポートタワー前にあるコンテナハウスの喫茶カフェ「SO TABLE KOBE 0330」で上演する。
片桐さんは「震災前後のころに、よく神戸でお芝居をしていました。山のほう、海のほう、いろんな街を歩きました。そこここで出くわすすてきな喫茶店でよくお茶飲んで過ごしました。今回は劇場を出て、喫茶店のひとすみでお芝居します。おかしくて禍々(まがまが)しい、けったいなお芝居です。しかも観覧無料…けったいです。もし出くわしたら、足を止めてみてください。最後まで立ち会っていただけたら、なお幸せです」(原文ママ)とコメントを寄せる。
岡田さんは「実際の喫茶店を会場にして行われる演劇作品を、数年ぶりに喫茶店文化の根付いた都市・神戸で再演する。人が1人で喫茶店で過ごす時間の中に潜んでいるかもしれない切実な不穏さに、この上演を楽しむことを介して思いを至らせてもらえたら。そして現代の社会、現代という時代に生きることがはらむあれやこれやの前に立ちすくんでもらえたら」と話す。
上映時間は30分。立ち見。観覧無料。雨天中止。予約不要。