神戸を拠点に活動するソプラノ歌手・深川和美さんが現在、東日本大震災の被災者にエールを送る歌声メッセージ「えっさほいさっさ」を募集している。
神戸生まれの深川さん。京都市立芸術大学音楽学部声楽専修卒業しフランス・パリへ留学後、フランス近代歌曲を中心に活動し、数々の音楽コンクールなどでの受賞歴を持つ。そうした中、阪神・淡路大震災が起こり神戸市長田区のマンションで被災。深川さんは当時「これまで好きだったフランス歌曲への関心を失い、その時に口から出てきたのが幼いころに歌っていた童謡や童歌だった。商店街などで童謡を歌い始めると皆が足を止め座り込み大合唱になった。童謡が必要なのは私だけじゃない」と確信したという。以来、日本文化を見つめ直し、日本の歌や武満徹の曲、中原中也などの詩人の作品などを歌うようになる。2004年より観客参加型コンサート「深川和美の童謡サロン」を主宰し全国各地で公演している。
深川さんは、東日本大震災の直後から「くちびるにうたを」と題した支援活動を開始。「避難所で生活していらっしゃる方々がラジオ体操などを始めたニュースを聞き、避難所のみんなで声を出して歌う手助けができるような本を送りたいと思った」と深川さん。楽譜に歌詞をつけたミニブック2000部を作り被災地へ送った。さらに、被災地の避難所へ出向き子どもから大人まで世代を越えて歌うことができる童謡を大合唱するなど、活動の幅を広げている。
今回、童謡「お猿のかごや」の掛け声「えっさえっさえっさほいさっさ!」を4回繰り返した動画を「東北応援歌声メッセージ」としてサイトで募集。独仏伊など海外からも寄せられ、現在までに延べ200人以上が参加している。投稿された動画は声だけを抜き出して編集し「お猿のかごや」新バージョンのCDを被災地の小学校などに送る。1枚1,000円で販売し収益は、東北被災地の学童保育支援に充てる。
同プロジェクトは、海外の友人らが日本を心配して送ったメールがきっかけ。「何かできないかと気をもんでいる人」がたくさんいる事を知り、「この人たちに参加してもらえる支援活動はないか」と考え思いついたという。「被災地で童謡を歌ったとき、『えっさほいさっさ』のフレーズが特に盛り上がった。曲を知らなくても簡単なリズムですぐ覚えられるし、外国の方にも歌っていただける」と深川さん。
「声高に『頑張れ』と言うのでなく、歌に込めた思いを届けたい。16年前、皆で声を合わせ元気が出たことを思い出して、みんなの歌声を遠くの地から歌声応援メッセージとして被災地へ精いっぱい届ける」と力強く語る。
動画の募集締め切りは8月31日、投稿方法と寄せられた動画はサイトで確認できる。問い合わせはカフェ「木馬」(神戸市中央区北長狭通3、TEL 078-391-2505)まで。楽曲のCD完成とスマートフォンアプリ配信開始は11月6日を予定する。