■「新・美脚研究所」の目的とは
同社広報の境祥子さん(以下境さん):社名の「バリュープランニング」には新しい価値を創造するという意味があり、1994年6月9日に創業した。当時ストレッチパンツ自体あまりなく、市場自体なかった。そんな中、機能性にこだわったストレッチパンツという新しい価値を生み出し、それが今ではこれだけ世の中に広がって、ストレッチパンツの需要も増えている。20周年を迎えた今、ここでさらに新しい価値を提供していくべきではないか、という考えがあり、商品力を追求するためにリニューアルした。
■施設内の様子
・「くっしんちゃん」がお出迎え
入り口では、シーズンごとにパンツを履き替え、日々品質を検証するための屈伸を繰り返すロボット「くっしんちゃん」が出迎えてくれる。以前の「美脚研究所」から活躍する「くっしんちゃん」だが、同施設を開設する際に「ストレッチパンツだけを扱うアパレルはほかにない、こだわりが伝えられたら」と外からも見える位置に配置され、現在はPR大使として活躍しているという。
・「人間工学」の研究にはランニングマシンも
縦にも横にも伸びるストレッチ生地を使用している同社のストレッチパンツ。施設内の研究室の一角にはランニングマシンを置き、「人間の足の動きをよりスムーズにするようなパンツを作りたい」と歩いているときの足の動きのデータを取り、商品開発に生かしている。データを取る際はランニングマシンの前と横にカメラを配置、カメラが撮影する映像データをパソコンで分析する。また表面の温度を可視化するサーモグラフィーや布と皮膚の間の温度を測る「衣服内気候測定器」なども使い、人間工学の研究の成果によってより快適な製品づくりを目指す。
また腰・ひざ・くるぶしのあたりにシールを貼り、骨盤の位置やひざの曲がる角度を計測することで歩きやすさを調べる。年齢とともに足の歩幅が狭くなるため、パンツによる歩幅の違いの計測も大切な要素の一つだという。担当者は「弊社のストレッチパンツは外から見るとシンプルなデザインのものが多いが、実は機能がたくさん入っている。腰や足の形は人それぞれ。どんな方にも履きやすさを提供したい」と話す。
・工場で使うミシンを導入
研究所内には実際に商品を生産する工場でも使っているミシンを導入し、工場で生産にかかわるスタッフにも提示できるように研究を続けている。
境さん:企画から始まり、生地を開発。形やシルエット・デザインを作り、生産管理の分野も研究所で担う。他社はあり物の生地を使うことが多い中、弊社は糸からオリジナルでメーカーと共同開発している。研究所内でサンプル品のテストなどを行い、チェックを繰り返すことでお客さまサービスにつながれば。
・「品質管理」では洗濯も
家庭によって、洗濯の方法はさまざま。国内外の洗濯機をそろえ、洗剤の種類も豊富に用意してテストしている。「お手入れしやすい、洗濯機で洗える」ことが商品化の条件の一つでもあり、センタープレスの入った商品でも商品の型崩れがしにくいように開発していることがポイント。実際にスタッフが何回もテストパンツをはき、それを洗濯するというお客さまの日常の使用感に近い状態でテストしている。色落ち、けば立ち、ひざが抜けていないかを試している。開設した施設では、テスト用に乾燥室も作ったという。
・温度と湿度をコントロールした「品質検査ラボ」
肌触りや生地強度をデータで見る検査を行う「品質検査ラボ」では、人によって感じ方の違う「肌触り」を計測する機材や生地を引っ張り生地の強さを見る装置などを設置。生地の強さには染色の違いから色によって差がでることもあるため、同社では全色必ず検査をする。強度を保証できない色がある場合は、来シーズンに向けて開発し直しになることもあるという。
また生地に1.5キロの重りを付けて、どれだけ伸びるかの伸長率と、重りを外した時にどれだけ戻ったかの回復率を測る「伸長回復率試験機」も。ストレッチパンツの開発には欠かせない検査だという。研究所にはほかにも摩擦でどれだけ色移りするかを調べる「摩擦堅牢度試験機」などが並ぶ。
境さん:品質管理の検査については、他社では外部の第三者機関に調査を委託するもの。弊社では、開発の途中段階から検査をし、全色チェックなど安心を追求できる施設。一般的な規格と「ビースリー基準」とを別に設けて商品を作ることでお客さまに安心してご利用いただきたい。
■今後の展望について
境さん:研究所の新設に続いて、来年2月には「おもてなし研究所」のオープンを予定している。また、トレーサビリティの向上にも力を入れたいと考えているので、来年中には「ビースリーは安心・安全」ということをお伝えしていくための枠組みを作りたい。それも「お客さまを笑顔にしたい」が大前提。そのために必要なものは「ハード(ものづくり)」「ハート(おもてなしのサービス)」「ソフト(安心・安全の情報を提供すること)」の3つだと考えている。研究所の新設はその第一弾だと思っている。
ものづくりに重点を置き、ストレッチパンツ一筋でこれまでやってきた。そして、商品があって、その良さをいかにお客さまに伝えられるかを常に考えている。今後も「ものづくりアパレル」として研究・開発に努めていきたい。
■取材を終えて
「1本持っていたらいい、定番の商品」ととられがちなストレッチパンツだが、同店利用客のリピート率は高く、シーズンごとにこだわった商品も魅力の一つ。3号~21号とサイズ展開も豊富で、縦横斜め360度に伸び縮みし、「一度はいたらやめられない『魔法のパンツ』」とも呼ばれているという。
取材中「ストレッチパンツのみを扱っているブランドなので、それだけに特化して開発できる強みがある」と話してくれた境さん。今後も、研究所に導入した設備を駆使して開発する新商品や同社の動向に注目したい。