岩手県・盛岡から神戸までを自転車のみの移動に挑戦していた「カミングライダー」が5月7日、神戸ポートアイランドのワールド記念ホール(神戸市中央区港島中町6)と神戸国際展示場(同)で行われた無料音楽フェス「COMIN’KOBE16(カミングコウベ)」の会場に到着した。
阪神・淡路大震災を風化させず語り継ぎ、神戸からの恩返しとして毎年開催されている同フェス。2011年3月に東日本大震災が起こり、2013年からは東日本大震災の被災地と神戸の約1200キロメートルを自転車と音楽でつなぐカミングライダー企画が始まった。初代はフォークシンガーの寺山リウジさん、4代目となる今年は神戸のシンガー・ソングライターこんそめぱんち☆木村さんが「自奏と自走のキャラバン」に挑戦。開催当日までに無事ゴールすればステージで「旅の中で完成した新曲」を歌うことができる。
出発11日前の4月5日。同フェスの初回2005年から実行委員長を務めるライブハウス「KOBE太陽と虎」のオーナー・松原裕さんが5年生存率10パーセントというステージ4の腎臓がんであることを告白した。出発2日前の14日には熊本地震が発生。木村さんは多くの思いを背負い完走することを誓って16日に出発した。
東北では「熊本地震の被害を知ったおばあちゃんが小銭をかき集めて、コンビニで募金しまくっていた。何か力になりたいと心を痛めている人たちも多かった」と木村さん。行く先々のライブハウスやミュージシャンも闘病中の松原さんのことを案じ、木村さんに松原さんへのメッセージを託す。「さまざまな人たちにお世話になれたのは、『太陽と虎』や松原さんの力あってこそ。まだまだ死なせるわけにはいかない人」と熱く語る。
開催当日の朝、前日から神戸の公園にテントを張って最後の野宿していた木村さんが自転車に乗って登場。開会式に集まった来場者らに拍手で迎えられた。木村さんは旅の中で作ったという松原さんに向けた新曲を披露。最後は会場が一体となり大合唱となった。
カミングライダーを終えて木村さんは「東北の景色を見てニュースは望遠鏡だと感じた。テレビで映っているものの周りにはたくさんの知らないことがあった。自分の足で行って見て感じるのが大事だと感じた。この挑戦が被災地支援に関心を持っていただくきっかけになれば」と話した。