神戸らんぷミュージアム(神戸市中央区京町、TEL 078-333-5310)で12月14日、企画展「至芸のガラス 巽智世・るり-手彫りでガラスを駆ける-」が始まった。
同展は、市内在住の作家・巽智世さんと母・巽るりさん親子によるグラスリッツェン作品展。イニシャルグラスなどの小さい作品から大きな鏡に名画「天地創造」を模写した作品まで、技術的にも難しいといわれる赤や黒の色ガラスに繊細な模様を施した作品など45点を展示している。
グラスリッツェンとは、ダイヤモンド粒子粉末が付着した特殊なペンを使いガラスに繊細な模様を彫るヨーロッパの伝統工芸。「リッツェン」は、ドイツ語で「ひっかく」という意味を持つ。今回のテーマについて、智世さんは「リッツェンは限りなく絵画に近い表現ができる彫り物で、単色グラデーションを駆使することにより芸術性の高い作品の制作が可能。旅をしているような気持ちで表現の可能性を探索しながら生まれた作品を集めた。一言で表すと『面白い旅』かな?」と話す。
父もステンドグラス作家である智世さんは幼いころから芸術に親しんで生活してきた。「母がグラスリッツェンを始めたころは、まだ模様の施されていないグラスと完成したグラスを見比べて『模様がない方がきれいなのに』と思ったこともあった。ずっと近くで母の試行錯誤する姿を見てきたので、遠回りすることなくグラスリッツェンの技術を身に付けることができた」とも。
「今回展示されている中で最も制作時間がかかったのは、赤ガラスに彫刻した『天使』という作品。寝ているとき以外は、1カ月間彫り続けた。ルーペを用意しているので、ぜひ細かい部分まで見てほしい」と智世さん。
智世さんは「今ではヨーロッパより日本の方が盛んになっている。異文化を取り入れてきたガラス工芸は神戸の街にとても似合うし、ふさわしいと思う。ガラス工芸が神戸の文化だといえるようにこれからも幅広く活動していきたい」と、その思いを語る。
開館時間は10時~17時。月曜休館。入館料は、大人=400円、小人(中学生以下)=200円。来年1月10日まで。