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神戸の帽子専門店「マキシン」が創業80周年 五輪・博覧会・企業の制帽など製作

老舗帽子専門店「マキシン(maxim)」渡邊百合社長(左から2番目)を囲むマキシンファミリー

老舗帽子専門店「マキシン(maxim)」渡邊百合社長(左から2番目)を囲むマキシンファミリー

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 神戸トアロードにある帽子専門店「マキシン(maxim)」(神戸市中央区北長狭通2、TEL 078-331-6711)が2月25日、創業80周年を迎えた。

キダ・タローさん作曲の社歌「マキシンの歌」

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 日本にまだなじみの薄かった復活祭の日にイースターハットをウインドーで飾ったり、帽子のファッションショーを先駆けて開催したりするなど「ハイカラ文化」の一翼を担ってきた同店。マキシン神戸アトリエで生み出されるさまざまなフォルムの帽子は、それぞれの帽子職人が全工程を手作業で仕上げている。

 店名は、ラテン語で「最高・最上」を意味する「Maximum」から。創業者の渡邊利武さんが帽子作りへのこだわりとして掲げる「最上の技術を持つこと、最高の素材を取りそろえること、お客さまに最大のホスピタリティを尽くす」の思いを込め名付けた。

 同社ではこれまで、ANA、JAL、JR西日本、「藤子・F・不二雄ミュージアム」「サンリオピューロランド」などの制帽のほか、1984(昭和59)年ロサンゼルス五輪、1996年アトランタ五輪、2000年シドニー五輪などの日本選手団の制帽を手掛けてきた。博覧会で使われる制帽も多く製作しており、1970(昭和45)年大阪万国博覧会を記念した松下館の「タイム・カプセルEXPO'70」収蔵品となる帽子も製作している。

 1960(昭和35)年ごろ制定したという社歌「マキシンの歌」は、「浪花のモーツァルト」の異名を持つ作曲家、キダ・タローさんが「木田太郎」名義時代に作曲。1970年代には、元「漫画トリオ」の横山ノックさんと上岡龍太郎さんが司会を務めていた関西テレビのトーク番組「ノックは無用!」の人気コーナー「魅惑の変身」に帽子を提供したことで多くの人が知るきっかけになった。TBS系テレビ番組「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」では2008(平成20)年2月8日の放送分から中居正広さんが同社の製作した帽子を着用している。

 創業者の息子で2代目社長の渡邊浩康さんが1992(平成4)年に急逝したことで、浩康さんの妻の百合さんが3代目社長を引き継いだ。百合さんは1970(昭和45)年の大阪万博開催時、万博協会エスコートガイドを務めた経歴を持ち、2007(平成19)年に神戸市から産業功労者表彰を受けている。

 現社長の百合さんは「これまで当社の帽子職人は裏方に徹していたが、今の時代は職人もコミュニケーション能力や話す力も必要になってくると感じ、名前や製作の思いなどをメディアに露出する機会を増やした」と明かす。

 同社の帽子デザインから生地の選定・仕立てまでを一貫して仕上げるモディストの大平千鶴子さんは2010(平成22)年、フランスで開催された「サマーハットフェスティバル」で総合第1位・観客投票第1位を受賞。2018(平成30)年には、「平成30年度神戸マイスター」に認定された。

 百合さんは「創業者のこだわりであった最上の技術と最高の素材が世界に通用する帽子をキープする条件の一つだが、定番だけでなくオリジナリティのある芸術性に富んだ帽子を作るモディストの技術を見て、次世代の人たちが継いでいきたいと思う環境を提供していくことも大切。ありがたいことに当社には若い世代の帽子職人が育っている。これからも職人の技術を伸ばしていく会社でありたい」と話す。

 営業時間は10時~18時。水曜定休。

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