古野電気株式会社(本社:兵庫県西宮市、代表取締役社長執行役員:古野幸男、以下 当社)は、本年6月にシンガポールで開催された「World Aquaculture Singapore 2026」および10月にスロベニアで開催された「Aquaculture Europe 2026」において、当社が開発中の低コストマルチビームソナーを用いて、養殖生簀内の魚群分布や魚の行動を定量的にモニタリングする技術に関する研究成果を発表しました。

水産養殖業は、世界の持続可能なタンパク質供給を支える重要な産業である一方、気候変動に伴う海水温の上昇や海洋環境の急変によって魚の食欲や遊泳行動は日々変化しており、従来の画一的な給餌では対応が難しくなっています。また、飼料費は生産コストの大部分を占めることから、給餌ロスの削減が重要な課題となっています。さらに、国際的にFish Welfare(魚の福祉)への関心が高まり、魚の状態を客観的に把握する指標の重要性も増しています。当社ではこれらの課題に対応するため、生簀内の魚群分布や行動を昼夜・濁りを問わず連続的に把握できるマルチビームソナーの活用に取り組んでいます。
本研究では、当社が創業以来培ってきた水中音響技術を養殖分野へ応用し、以下の目標を掲げました。
- マルチビームソナーの低コスト化
- 魚の行動を2次元データとして定量的に取得
- 生簀全体の魚群分布を3次元可視化
当社は、これらの技術を養殖事業者や研究機関と広く活用することで養殖現場のDXを推進し、自動給餌とリモートモニタリングを支える基盤の構築を目指します。
発表内容
2つの国際会議では、当社が開発中の低コストマルチビームソナーの技術と、日本およびノルウェーの養殖場で実施した実証試験の成果を発表しました。本研究では、魚群の分布や行動を2次元・3次元で定量的に捉え、養殖現場における行動モニタリングへの有効性を検証しました。
1.マルチビームソナーの低コスト化を実現する新アーキテクチャ
従来、生簀全体をカバーするには100台以上の増幅器が必要でした。当社は、特許取得済みの独自アーキテクチャにより、単一の増幅器で同等の機能を実現し、大幅なコスト低減を達成しました。水深・水温・姿勢センサーを内蔵し、1本のデジタルケーブルとイーサネット接続のみで運用できます。
2.摂餌行動に伴う深度分布の変化を定量化 - ブリ生簀での2次元・3次元モニタリング
三重県尾鷲市の商用養殖場では、生簀の外側から網越しに鉛直断面を連続観測し、摂餌に伴う魚群の深度分布の変化を定量データとして記録しました。魚が「どの深さに、どれだけの密度で分布しているか」を数値化し、取得データはスマートフォンアプリで陸上から監視できます。さらに徳島県阿南市では、ソナーを生簀中央で360°回転させることで魚群分布の3次元可視化を実現しました。底層のブリ魚群に加え、上層を遊泳するイシダイの個体を検出し、群れ単位と個体単位の両方を探知できることを確認しました。
給餌開始前
給餌開始直前
給餌開始直後
摂餌中

給餌による魚群深度の変化を定量化
3.2台同期による生簀断面の全域カバー - ノルウェーのサーモン養殖場での実証
ノルウェー科学技術大学(NTNU)の研究施設では、2台のマルチビームソナーを同期させ、大型サーモンの生簀で実証試験を行いました。2台のソナーで取得した画像を接合することで、生簀断面のほぼ全域を連続的に可視化し、魚群の鉛直・水平方向の移動を把握しました。また、遊泳速度の昼夜差や網の形状変化も定量的に確認しました。これらの成果により、マルチビームソナーが養殖現場で実用可能な行動センサーとなることを示しました。
本技術によって魚群分布や行動を秒単位で把握し、魚の状態に応じた給餌制御や陸上からの遠隔監視が可能になります。今後は、自動給餌やリモートモニタリング、異常行動の早期検知などの実現を目指し、持続可能な養殖を支える技術開発を進めてまいります。
発表タイトル
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World Aquaculture Singapore 2026(2026年6月5日)Quantitative 2D and 3D Monitoring of Fish Distribution and Feeding Behavior in Yellowtail
(Seriola quinqueradiata) Aquaculture Cages Using a Multibeam Sonar
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Aquaculture Europe 2026(2026年10月1日)Full-Coverage Monitoring of Fish Distribution in Aquaculture Sea Cages
Using a Dual Two-Dimensional Sonar Combination System
発表者
- 古野電気株式会社 技術研究所 第1研究部 養殖支援技術研究室
池上 温史、岩田 光平、川上 連太郎
- ノルウェー科学技術大学(NTNU)生物科学部(オーレスンキャンパス)Christian Stolz
※「World Aquaculture Singapore 2026」は当社3名の共著、「Aquaculture Europe 2026」は当社とノルウェー科学技術大学(NTNU)の共著です。
なお、研究は北海道大学との連携のもと実施しました。いずれも発表者は池上 温史です。
研究者コメント
養殖の現場では「魚は正直だ」とよく言われます。餌への反応や泳ぎ方の変化には、水温や体調、海況の影響がそのまま表れるからです。しかしこれまで、その変化を生簀全体のスケールで、昼夜を問わず数値として残す手段がありませんでした。今回、マルチビームソナーの低コスト化を実現し、これまで見えなかった水面下の魚群分布を数値化できたことで、給餌判断を人の経験から機械へ引き渡す道筋が見えてきました。今後は、行動データに基づく自動給餌制御、異常行動の早期検知、魚種を超えた福祉指標の確立に向けて研究を進め、持続可能な養殖を支える技術を当社から提供してまいります。
古野電気株式会社 技術研究所 第1研究部
養殖支援技術研究室 池上 温史

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古野電気株式会社
1948年に世界で初めて魚群探知機の実用化に成功して以来、舶用電子機器分野においてその独自の超音波技術と電子技術をもとに数々の世界初・日本初の商品を提供し続けてきました。そして今日、世界100か国以上での販売体制を確立し、世界規模の舶用電子機器総合メーカーとしての確固たる地位とブランドを築いてきました。

古野電気株式会社 研究開発棟「SOUTH WING」
本社:兵庫県西宮市
設立:1951年 (昭和26年)
事業:船舶用電子機器および産業用電子機器等の製造・販売
資本金:7,534 百万円
従業員(連結):3,411 名
売上高(連結):140,616 百万円
代表者:古野 幸男
上場取引所:東京証券取引所 プライム市場